第39話
「ユキ?」
下を向いて歩いていたから声がかかるまで気が付かなかった。
声に慌てて顔をあげると。
「ご、ごめんっ!」
素っ裸のネウス君がいた。
いや、本当ごめん!まだ樽風呂に浸かっていると思って大丈夫だと思ってた。
いくら三十路のおばさんにとはいえ、見られたくないよね。
まぁ、眼鏡はずしてるから細部は見えないんだけど。いや、細部もなにも一瞬だったから、服着てないって認識しかできなかったというか。
パッと下を向くと、ネウス君の足元だけが見えた。
「……」
まだ、見えてる。えーっと、立ち去るとかしないのかな?
「ユキ、顔……」
眼鏡はずしてるから普通だと思ったっていうのは、さっき別の子に聞いた。
ネウス君もびっくりして裸のこと忘れてる?
「あーっと、そうなの。眼鏡はずしたの。顔にはめてるの眼鏡っていうんだけど、よく目が見えないのを、見えるようにする道具で、えーっと眼鏡、その、外してるから、見えてないからね?見てないから、うん、あ、服を洗浄するから、服どこ?きれいになってから服を着てね」
私の言葉に、ネウス君の慌てた声が聞こえた。
「あ、俺、服着てないっ!ご、ごめん、ユキ、あっと、裸って大きくなったら見ても見せてもダメだっておばばに言われてたんだっ。いや、でも……別にユキに見られても平気だけれど」
は?
ああそうか。兄弟みたいにみんなで小さいころから育っていれば、別に裸を見られても見てもなんとも思わないのか?
「ユキは見たくないんだよな……」
いや、いや、見たいとか見たくないとかでなく、見ないから!……ああ、でも従妹のきららなら見たうえで「そんな貧相な体見せられてこっちは迷惑よっ!謝りなさいよ!」とか言いそう。
「ごめん、ユキ」
ネウス君の声が遠ざかったので、顔をあげて服を洗浄する。
「すげーよ、体がぽかぽかで。楽しかったよ」
「ごしごし、ごしごし、なーの」
服を着たドンタ君とモモちゃんが私に報告してくれる。それから、剣にも向かってミーニャちゃんが話しかけた。
「精霊様、綺麗に身を清めました」
「オイラも~清めるの気持ちいい」
ドンタ君も興奮した様子だ。
初めてのお風呂は、お湯に浸かることが怖いという人もいると聞いたことがあるけれど、皆楽しそうでよかった。
おばばさんも満足げな表情をしている。
全員風呂が終わったところで、おばばが声をかけた。
「そろそろ暗くなるぞえ。寝る準備をするんじゃ」
おばばの言葉に空を見上げる。太陽が地平線の近くにある。4つの月は、太陽を追っていったわけではないのか、ほぼ真上に明かりを増して輝いている。
「ねぇ、お姉ちゃんはどこで寝るの?ネウスお兄ちゃんと一緒に寝る?」
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