第29話
子供たちの前には、同じように葉っぱに乗せられた肉片。おババと子供たちが4人。私もいれて6人。両掌に乗るサイズの砂ネズミを皆で分ければ一人分は焼き鳥の串1本分の肉もない。
私の葉っぱの上にだけは、焼き鳥2本分ほどのお肉がのっている。
私はいいから、皆で分けてともいえない。
これは、ネウス君やミーニャちゃんを助けたお礼だ。
断ることは、命を助けたことはお礼など必要のない軽いことだと、皆の命は軽いと言っているようなことにもなる。それに、ネウス君がまた両腕を差し出しかねない。
「姉ちゃん、ミーニャを助けてくれてありがとう」
ドンタ君がにかっと笑う。……あのまま死ねばよかったのにと暗い顔でつぶやいていた姿はもうない。
「それから、火もありがとうございました」
ミーニャちゃんもにこりと笑う。
「ネウス兄ちゃんも、砂ネズミ捕ってきてくれてありがとう」
なんて、いい子たち。ううん、違う。わがままなんて言っていたら生きていけないだけなのかもしれない……。
20歳前後のネウス君。それから、12歳くらいのミーニャちゃん、8歳くらいのドンタ君。一番小さな2歳くらいの女の子のモモちゃん。
それからおババ。おババ以外……大人はいないのだろうか?なぜ子供たちだけ?
……もしかして、火が消えて、街に出かけて命を……?ずんっと心臓に重たいものが落ちる。ドンタ君のこの先いいことなんてないっていう言葉が改めて重たい。ネウス君の魔力がないから差し出せるものは自分自身しかないという言葉が重い。
魔力がない……それだけでここまで追い込まれてしまうの?涙が落ちそうになった。絶対幸せにしてあげる。
魔法も魔石もない世界に生きていた私が、魔法なんてなくたって幸せになれるんだって、絶対絶望なんてさせないっ!
「ありがとうネウス君。それから料理を作ってくれてありがとう。飲み物を取ってきてくれてありがとう。みんなありがとう」
いろいろと思うこともあるけれど、今は笑って皆にお礼を言う。
「え、へへ。水魔法が使えないから、飲むのはあの木の汁なんだ」
「あの木の葉っぱと根っこの皮向いたものは食べられるんですよ」
皆がいろいろと説明してくれる。
「これこれ、まずはご飯を食べるんじゃ。話は後でいくらだってできるじゃろう」
おババの言葉にいただきますと手を合わせる。
ああ、そうだ。
「お供えいたします。お召し上がりください」
と、小さくつぶやく。
ディラはかろうじてコップと言えなくもない器を手にとり飲んだ。
『うへー、相変わらずまずい。でも懐かしい味だ。収納鞄を持っていないころは、森の中で水がなくなるとこれ飲んだよ』
ひどく顔をしかめながらもディラは半透明に透き通ったコップの中身が空になるまで飲み干した。
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