第28話
「何を言っておるのじゃ。魔力を大地に練りこまなければいくら畑を作ったとて……」
ああ、やっぱりか。
魔法が使えないから、畑も作れない。
作物も育てられないと……。そう、思い込んでしまっていたのか……。
「魔力を練りこまなくても、肥料と水と太陽があれば育ちますよ」
森を見る。
「ほら、この森の植物、誰も魔法で育てたわけじゃないでしょう?」
そんな当たり前のことにすら目がいかないのか。
「当たり前じゃ。森は魔力のたまり場と言われておる」
へー。そうなんだ。って、結局魔力が無いなら植物が育たないって思ってるってこと?だから、違う。
……いや、本当に違うのかな?この世界ではもしかしたら本当のことなの?
荒野にはわずかにサボテンが生えていた程度で、森のように植物でおおわれていなかった。300年……。
植物の種が飛んで、根付いて……たとえ降水量が少なかったとしても、もう少しは何か育っていそうな物。いや、でも、サハラ砂漠みたいなところもあるわけだし、300年たとうと植物が生えないことだってあるかな?魔力は関係ないと思う。
思うんだけど、もし、本当に魔力がなければ育たないとすると……。
いや、待てよ。
「魔力がたまっている森の中に畑を作れば麦は良く育つでしょ?」
木々を切り開くのは大変かな。流石にそういう作業だけはディラに何か魔法の便利な道具が無いか聞いてみようかな。本当は全部魔法に頼らずにできるって見せたいけれど、流石に子供と老人じゃぁ、マンパワーが足りない。
「だめじゃ。森は危険じゃ。魔力がたまっているといったじゃろう。貯まった魔力に触れれば、森の魔力に影響され魔力のコントロールができなくなる。場合によっては、魔力が暴走して命を失う危険があるのじゃ」
なんか、変なことを言ってる。
「おババさん、森の魔力に影響されて魔力のコントロールができなくなるって、魔力がない私たちがどう影響されるんですか?」
っていうか、魔力のたまり場ってなんだろうね。
日本だと森はマイナスイオンたっぷりで癒される空間って言われたり、富士の樹海は磁場がくるっていてコンパスがぐるぐる回るって言われてたり……とかいろいろあるけれど。
「おや?そういわれれば、そうじゃの。森と接するこの場所で長年暮らしておるし、森の入り口付近には何度も入っておるが、ワシはこの年までなんともないの……」
ドンタ君が私の手をつかんだ。
「魔力が無くても、畑を作れるのか?畑って、食べるものを作るところだろ?なぁ、俺たちにも、食べる物作れるのか?」
ドンタ君の目が希望の光でキラキラ輝いているのが分かる。
できないと思っていた火をつけることができるようになって、自信が持てたんだよね。もっともっといろいろできるはずだと思ってくれているみたい。
「時間はかかるし、大変だけれど、頑張れるなら」
ドンタ君が笑った。初めて、ドンタ君が笑顔を見せた。
「じゃぁ俺頑張る。そうして、パンを作って、おババに食べさせてやるんだ!」
おババの目がまた見開いた。
「おババ、パンが食べたいんだろ?俺、頑張るからな」
ば、ばか。
ちょっと、この年になると涙腺緩くなるんだからっ。ドンタ君、なんていい子なんだろう。
絶対に、畑で小麦作ろう!
収納袋からパンを取り出すのは簡単だけれど、そういうことじゃないんだ。
あ、ディラが私の後ろで号泣してる。涙腺緩いお年頃ですか?人が泣いてるの見ると、不思議と涙が止まるよね。
「焼けたよ!ご飯だよ!今日はね、ネウスお兄ちゃんが砂ネズミを捕ってきてくれたんだから!ご馳走よ!」
ミーニャちゃんが葉っぱのお皿や木の器をいくつか運んできた。
ああ、あれから食事の準備を一人でしていたんだ。病み上がりだというのに……。もう、すっかり大丈夫なのかな?ハイポーションのおかげ?
ネウス君が、ミーニャちゃんから受け取った葉っぱのを持ってきた。葉っぱの上には肉片が乗っている。
「ユキ、ミーニャを助けてくれてありがとう。本当は全部ユキに食べてもらいたいんだけど、アイツらにも……食わせてやりたくて……」
と、ネウス君は申し訳なさそうに子供たちを見た。
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ううう、ううう、クローゼットのドアで指を挟んで小指怪我して痛いです。
幸いキーボードを打つのには支障がないのでありがたいですが、このご時世、頻繁に手洗い消毒をすることもあり、傷をガードする良い方法をご存知の方がいましたら教えてください。とりあえず、防水のびーる絆創膏でしのいでますが、はっぱりとると指が白くなってる(´;ω;`)ウゥゥ
さて、再改稿版で少しずつ改稿しております。まったく手を付けてない話もあればちょこちょこ直してるところもありますが、ここ数話は、ちょこちょこ手を加えております。言葉足らずだった場所に加筆してる程度ですけど。
感想などいただけると嬉しいです。
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