第25話

『ユキ、かわいい上にすごいユキ。僕はすごい人間だとちょっと思っていたこともあったけど、ユキのがすごい!魔力0なのに、火を出せるユキはすごい!すごくてかわいい!』

 ……ディラが尊敬のまなざしを私に向ける。

 っていうか、かわいいって本気で言ってるのかな?どう見えてるんだろう?

 あまりにもまっすぐな目でこっちを見るから、恥ずかしくなって視線を逸らす。

 って、幽霊相手に照れるとか、何してるんだろう私。

「あ、火が、火が着いた……」

 ドンタ君が小さく赤く燃え始めた火を静かに見ている。。

「火が、俺にも……火が、つけられた」

 振り返ったドンタ君の目には涙があふれていた。

「俺、俺がつけたんだ……。魔力ゼロの低級民の俺が……火を……」

 ボロボロとあふれる涙。ポケットからハンカチを取り出して拭いてあげたいけれどあいにくとハンカチはなかった。

「違うよ、違う。ドンタ君、それは違う」

 私の言葉にドンタ君が顔を上げる。

「低級民のドンタ君が火をつけたんじゃないよ。魔力ゼロでも私たちは低級じゃない。だって、火もつけられるし、他にもなんだってできる。それにね、ドンタ君は……ミーニャちゃんがこれ以上苦しんで欲しくないって、人を思いやることができるでしょう?人を苦しませて笑うような人間とはちがう……」

 死ねばよかったなんて聞いた時には本当にびっくりしたけれど。でも、それは、ミーニャちゃんがこれ以上苦しまないようにと思っての発言だった。それに、火が消えた時も自分はひどい目に合うかもしれないと分かっていて火をもらいに行こうとしていた。

 俺のせいじゃない俺は知らないって逃げたっておかしくないよ。まだ10歳にも満たないのに……。

「ドンタ君は低級民じゃないよ……」

「俺……でも、魔力ゼロだ……」

 ドンタ君の鼻をつまんでやる。

 自分はダメだって。

 魔力がないから低級民だと呼ばれる存在で、魔法が使えないから食べる物すら十分になくてやせ細っても仕方がないんだって……。

 そんな風に思いこむなんて、絶対違う。

 人はみな違って当たり前なんだもん。低級だとか上級だとかあるわけない。あるわけないんだよ!

 魔力がなくたって魔法が使えなくたって代わりにできることは絶対ある。

 体育が得意な子、計算が得意な子、給食を残さず食べられる子、人にやさしくできる子、忘れ物をしない子、静かにできる子、ありがとうが言える子……。評価の基準が変われば、優劣なんてすぐに変わる。

 だから、人間には上も下もない。

 魔力が0だから下なんてそんな風に分けられるものじゃないんだ。


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