第15話

 立ち上がると思いのほか少ネウス君の身長は高かった。175はあるな。155の私の頭半分以上は背が高い。

「こっちだ」

 ネウス君が剣を片手に持って歩き出す。

『ユキ~』

 先を歩くネウス君。なぜか、ディラはドナドナされているかのように悲しげな眼で私を見ている。ネウス君に運ばれるのが嫌そうだ。

 なんでよ!

 女性に荷物を持たせるなんて死にたいとか言ってたんだから、今の状況はハッピーだよね?

 荒野を歩くこと、およそ1時間。

 そろそろ疲れたなぁと言うところで、ネウス君に声をかける。

「休憩しようか。あとどれくらいでつくのかな?」

「2日」

 はぁ?え?えええ

「ふ、2日?え?だって、飲み物も食べ物もなしで歩いてたの?」

 ネウス君が、ああと小さく頷いた。

「ちょっと待っててくれ。食べ物と飲み物探してくる」

 探す?

 きょろきょろとあたりを見回しても、岩と土で、川も木も見当たらないけれど?

 ネウス君が、剣をそっと地面に置いて、走り出した。

「あー、ちょっと待って!食べ物も飲み物もディラの収納袋の中にあるから大丈夫ー」

 と言う間もなかった。

 はー、まぁいいや。休憩休憩。

 地面に腰を下ろす。服が汚れるけれど、もう十分汚れているから関係ないか。

『ユキ、お腹空かない?喉も乾かない?』

 ディラがそわそわとしている。

「んー、さっき食べてからまだ2時間くらいだから、お腹は空いてない。喉は乾いたけれど……。水とか入ってる?」

 果実水は、果汁分がたっぷり過ぎて、さすがに飲み続けるにはちょっと辛い。

『水なら、水魔法で出せば』

 魔法、ね。魔力ゼロだって言ったはずだよね?

『えっと、水の魔石が入ってると思う。魔法で出した方が早いから使ったことないけれど小指の爪くらいの大きさの物で、酒樽1杯くらいの水は出るかな?』

 おや、そんな便利なものが。

「ありがとう。えーっと、水の魔石とコップを2つ」

 収納鞄から取り出し、しばらく待っていたらネウス君が戻ってきた。

「小さな物しか見つからなかった」

 手には丸いサボテンのようなものがのっている。

「ありがとう、えーっと、どうやって飲む?食べる?の?」

「こうするんだ」

 と、ネウス君がサボテンの棘が刺さらないように、石ころを、サボテンを挟み込む形でコップの上で持った。

 ぎゅーっと絞ると、水分がコップの半分くらいサボテンの汁が溜まる。

「はい」

 ニコニコと笑うガリガリのネウス君。

 全部を私に差し出そうとしてる。……喉が渇いてるよね?君も。

「これは、おいしいの?」

 念のため確認。アロエゼリーの中のアロエを思い出すと、ほんのわずかな甘味があったように思う。青臭さはなかった。

 コップを持ち上げ匂いを嗅げば、そのアロエに近いような気がする。青臭さはない。

「さっきもらった果物のように、美味しくはない」

 しょげるネウス君。

 いや、そういう意味じゃないんだけど。

「でも、あの、このあたりで採れるやつのなかでは一番うまいやつで」

「そう、君は美味しいって感じるんだね?」

 それが聞きたかった答えだ。




===============

あっというまに15話目です。感想などいただけると嬉しいです。

あ、アロエヨーグルト美味しいですよね。はじめて食べたのは、元職場の上司からもらった時です。

たぶん、それが無ければ自分では絶対選んで手に取らなかっただろうなぁと思っているので、上司には感謝です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る