第3話 帰宅


「ただいまー」


 帰宅の挨拶をするが返事がない。

 リビングには親父とお袋の姿はなかった。まだ帰ってきてないのか。

 自室へ戻りベッドに腰を下ろして一息つく。

 あの黒髪の子、いったい何者だったんだろう。明日の朝、泉の前で待ってるって言ってたけど。……待ってるってどういうことだ?


 それにしてもとんでもないこと押し付けられたな。フォリドか。勝てる自信が全くない。……とりあえず今はラティナの精霊パワーを信じるしかないか。

 居場所もわからないし、とりあえずどこかの町へ行って情報を集めないと。

 急いで今日中に準備して明日の朝出かけよう。

 いけね、もうとっくに昼回ってるじゃん。

 ええと、なにから用意すればいいんだ。あ! 金はいるよな。

 部屋の中をガサゴソと物色して昔隠したヘソクリを探す。


「えーと、どこだったかな……。お、あったあった」


 タンスの下から二番目の右奥に隠したヘソクリ袋を取り出す。

 どれどれ。

 100リーン硬貨が二枚、10リーン硬貨と1リーン硬貨がそれぞれ一枚。計四枚で211リーン。

 少なっ。……もうちょっと貯めてた気がしたんだけどな。

 再びベッドに腰を下ろす。


「ふあぁ……」


 無意識にあくびが漏れる。

 ちょっと疲れたな。

 ……少し横になるか。

 俺は今日あった出来事を思い出しながらベッドに横たわった。


―――

――


「……………………たよ」


 なんだ……。

 部屋の外から何か聞こえる。

 重い瞼を上げて窓の外を見ると空は十分に暗くなっていた。

 しまった。仮眠のつもりが結構眠っちゃったみたいだ。

 ぼんやりとしながら目をこすっていると、ふいに部屋のドアが開かれた。


「ジット? ご飯できたよ」


 お袋がドアの隙間から顔を見せる。

 もう夕食の時間か。


「うん、今行くよ」


 ベッドに横たわったまま軽く伸びをしてから起き上がる。

 ……そうか、旅に出るんだから、お袋や親父とはしばらく会えないのか。あ、今日のこと二人に伝えないと。いきなり旅に出るなんて言ったらどんな反応するだろう。

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