第13話 ヒロイン3
それから私は精力的に動きまくった。
勿論学園生活はきちんと送った。
フレたんといちゃラブ出来ないのは悔しいけど、まだ私は普通の女学生で居なければならないのだ。
反乱が起きた時に万が一にも私が関与していることを悟られるわけにはいかないのだから。
ただまあ、実験も兼ねて私の都合の良い環境を作り上げた。
積極的に作りまくった。
でも入学して半年位経つと、フレたんの情報が欲しくなった。
実際、反乱の計画を立てる際にはどうしてもフレたんを確実に軟禁して貰わないといけないのだ。
でないとフレたんは優秀すぎて、正直邪魔だ。
優秀なフレたんは素敵だけど、反乱の時は大人しくしていて欲しい。
ついでにあのロボ女の情報も得ないと、確実に引き離せない。
本人達は無理だ。
フレたんに私が動いていることを悟られると、絶対に疑いが向く。
ここはフレたんの側近にしよう。
パスカルたんは可愛いけどバッドエンドのヒロインが悲惨だったから、ちょっと近付きたくない。
ヨアンたんは影の時とか超カッコイイんだけど、影に洗脳も魅了も効きそうにないからダメだよね。
うん、ここはティッ君だな。ティッ君なら近付きやすいし、ここは一択だろう。
ゲームの知識を借りて、本を運んでくれるイベントを起こした。
イベントが起きるか不安だったけど、ビックリするくらい簡単にイベント通りに事が運んだ。
これがゲームの強制力というものなのかもしれない。
そうして翌日、用意していた薬草入りクッキーをお礼として渡した。
「これは君が作ったのですか?」
「はい、手作りです。私少し前まで平民だったので、料理はちょっと得意なんです。あ、美味しくなかったらごめんなさい。でも、手作りの方がお礼の気持ちが伝わるかなと思ったんです」
「ふぅん……変わった生地ですね。何が入っているのでしょう?」
良いから、食べろよっ!
生真面目なのはただの外面だろ!
なんでそんなこと気にするんだよっ!
「普通のものだと思いますが……あ、一部自分で森で集めたものですので、もしかしたら貴族の方には口馴染みがないのかもしれません」
「ご自分で材料を集められたのですか? この辺りで森と言うとローニョン森のことですか?」
「はい、そうです」
薬草が入っていることはバレていないはず。
でも、こう言っておけば例え違和感を感じても食べてくれるだろう。
嘘は言っていないし、問題ないはず。
「そうですか。凄いですね。では後程食べさせて頂きますね」
この場で食べさせたかったけど、さっさと行ってしまったティッ君を引き留める理由が作れなかった。
仕方がない。ゆっくり行こう。
……ん?
腕輪が光ってる?
何だろう、あれ。
いや、気にする必要はないか。
焦ることはない。こうやって少しずつ魅了していけばいい。
「パスカル・アモンにアニエス様のことを聞かれました」
「ティッキー・デュポンが昔のアニエス様のことを調べているようです」
「ローニョン森でモルガン・デモスを見かけました」
おかしい。
絶対におかしい。
何だ、これは。
ティッ君は私と会っても何の反応も示さない上に、向こうは確実に私を調べている。
魅了させようとしたことがバレた?
どうやって?
ううん、違う。
今はこれからどうするかだ。
まず確実にヨアンたんが私を見張っているはずだ。
ヨアンたんは影だから、私には全く分からないけど、絶対している。
だから今は動いたらいけない。
元々学園の外の
反乱軍と接触していたことが分かったら、強引に反乱軍と見做される可能性もあるのだから。
でも、同時にティッ君達にはどうしたって接触しないといけない。
情報が必要なんだ。
仕方がない。
時間は掛かるけど、思考能力を低下させる薬を通常の数百倍希釈させて使おう。
洗脳に気付かないタイミングで洗脳の薬も投与しよう。
勿論絶対に分からないように効果が出るか出ないかくらいの濃度にしないと。
どの
そうだ。
折角だから、王城内にも
「アニエス・モルメク嬢。貴女を王族への傷害罪及び反乱の疑いで連行させて貰う」
「………………は?」
ある日、突然、騎士達がやってきた。
本当に晴天の霹靂だった。
何もかも順調に行っていると思っていたのだ。
何も失敗は犯していないはずだ。
全て秘密裏に進められていたはずだ。
なのに、何が起こった?
意味が分からなかった。
だけど、第一王子を洗脳して誘導していたことも、反乱組織を作っていたことも、全てを私が操っていたことも、何もかも知られていた。
何もかもバレていた。
何で。
どうして。
どこから漏れた?
意味が分からない。
何これ、夢?
否認して否認して、黙秘を貫いていると、どんどん待遇が悪くなっていった。
それでも認めないでいると、牢に入れられた。
その数日後、フレたんがやってきた。
「!!!!!」
やっぱり、フレたんは
あんなロボ女の毒牙に掛かっていてもやっぱり
そうよね、
「アニエス・モルメク。貴様の悪事は既に全て調査済みだ。否認も黙秘も結構。だが、私の婚約者を手に掛けようとした時点で貴様の命はない。少しでも反省を見せれば、貴族として名誉ある死を望む声も上がったのだろうがな。だが、もう終わりだ。後は処刑までの少ない日数をそこで過ごすと良い」
冷たい瞳が、怒りに満ちた声が、あの時と重なった。
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