第11話 ヒロイン1
「最期に言い残すことはあるか?」
どうしてっ
どうしてこうなった!
「あの人は私のモノよ! 私は次期王妃なの! あんた達、こんなことしてただで済むと思ってるの!? 私が王妃になったら、こんなことした奴ら全員処刑してやるっ! ああ、フレたん、私がすぐにあのロボ女から救ってあげるからね」
そうだ、私はヒロインなんだ。
だから、あの
「もう良い。執行しろ」
なのに、どうして!
どうしてフレたんの横にあのロボ女が居て、フレたんは私を冷たい目で見るの!?
どうしてフレたんは私を選ばないの!?
はっ、中の人が違うから?
そうだ、きっとそうだ!
返せ、私のフレたんを返せっ!
私はフレたんと幸せになるんだっ!
フレ……たん………………
視界がブレ、ブラックアウトする前に目に入ったのは、あのロボ女を優しい顔をして抱きしめるフレたんだった。
私が前世を思い出したのは、モルメク家に引き取られることになった時だ。
アニエス・モルメクという名前になってようやくここが乙女ゲームの世界で、私はヒロインだということに気付いた。
そのことに気付いた時の嬉しさは分かってもらえるだろうか。
大好きな世界に転生し、しかも自分が
愛してやまなかったあのキャラと両想いになれるのだ。
私はなんて幸せ者なんだろうと、本気でここは天国だとそう思った。
だけど、モルメク家に引き取られて、本当に乙女ゲームだという確信が欲しくて色々調べていると、私のフレたんと悪役令嬢であるロボ女の仲が非常に良いという信じられない噂を聞いた。
いや、フレたんは紳士だ。
ゲームでもフレたんはあんなロボ女に婚約者としてきちんと仲良くしているとあったじゃないか。
そうだ、何も気にする必要はない。
落ち着け、大丈夫。最終的にフレたんは私のモノになるんだ。精々あのロボ女はフレたんの仮初の愛をお零れして貰っていればいい。
そう、思っていたのに。
お姫様抱っこ!? 膝乗せ!? 顔中にキス!?
聞く噂全てが信じられないくらいにいちゃいちゃしているという内容ばかりだった。
例え仮初でも羨ましすぎるんですけど?
あのロボ女に勿体なさすぎるっ!
いや、もしかしてフレたんかロボ女のどちらかが私みたいにゲームを知っている転生者という可能性はないだろうか。
それならばゲームと違って仲が良い説明は付く。
もしそうなら……
そんな可能性、クソくらえだ。
どうする?
どうすればいい?
考えろ。
考えるんだ。
折角フレたんとラブラブになれるチャンスなんだ。
絶対失敗するわけにいかない。
それから私はどうなっても良いように、ゲームの知識を使って探し物をした。
あの2人のどちらが転生者でもこんな裏設定までは知らないはずだ。
あの乙女ゲームの開発者の一人に無駄に設定を練ることで一部で有名な人がいた。その人のブログに公式には使われていないけど、裏ではこんな設定があるよと暴露された設定がある。
本当にあの乙女ゲームにハマって、色々と情報を集めまくっていた私だったから知っているのだ。普通にプレイしただけの人達が知っているわけがない。
勿論、公式には使われていない設定だ。
実際にあるかなんてわからなかった。
それでも可能性があるなら探してみるべきだ。
そうして、私は課金したら使える好感度上昇アイテムに使われている薬物等を探した。
クッキーに練りこまれた薬草、ハンカチに組み込まれた禁忌魔法陣を編む為の糸、お茶に含まれた薬等々、思い出せる限りのものを探しまくった。
勿論、モルメク家の人には気付かれないよう、勉強熱心な子だと思わせ、自由時間を確保した。
そのお陰で本当に勉強に時間を割く必要が出て、時間は取られたけど仕方ない。
どちらにしろ勉強はさせられたのだから、必要経費というものだろう。
私はフレたんに出会う為に学園に行く必要があるのだから。
そうして、学園に入学する頃には目星は付けられていた。
後は実際に実験しなければいけない。
フレたんに変なものを使うわけにいかないのだから。
だけど、それよりもまずはフレたんとの出逢いイベントだ!
きちんとこなさなければ!
ヒロインらしく、無邪気で明るく、貴族社会に染まっていない無垢な庶民として、フレたんに覚えて貰わないと!
何事も最初が肝心だ。絶対失敗しないように。
ああ、
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