第10話 悪役令嬢の弟4
悩みに悩みまくっていたのだが、その日の夜、ステファニー姉様を訪問しに来た美少女王子が雑談するかのように俺達に声を掛けてきた。
「ああ、そうそう。クロード、ミュリエル嬢。これに目を通しておいてくれ」
「それは何ですか? リック様」
「ファニーは俺が貰うからな、その前に2人も身を固めるべきだろう?」
「ああ、手配して下さったのですね。ありがとうございます」
その言葉に急いでそれを見ると、俺達の婚約者候補の書類だった。
相も変わらず本当にこの美少女王子は優秀だ。
が、見逃せないものが一つあった。
「あの、フレデリック殿下。ミュリエルの書類の中に間違えてヨアン殿下が混じっておりますが……」
間違い、だよね?
そう言って下さい、お願いします。
「ああ、ヨアンがどうしてもって頼むものだからね。大丈夫だよ、代わりの条件はそこに書いてあるだろう?」
書いてある。
分家を興し、そこに婿入りし、辺境の小さな領地に越すことになると。
ヨアン殿下は体を動かす方が好きだから、全く苦にならないだろう。むしろ喜びそうだ。
だが、ミュリエルはわざわざこんな道を選ぶ必要はない。
「これはミュリエルの判断で決めていいのですよね?」
「勿論さ。時間がないとはいえ、愛のある関係を結べる方が良いに決まっているだろう。俺とファニーみたいにな」
それなら安心だ。
と思ったのに、結局ミュリエルが選んだのはヨアン殿下だった。
「ヨアンの馬鹿野郎!!」
思わず罵った俺は悪くない。
「安心しろ、クロード義兄さん。ミュリエルは俺が幸せにする!」
「義兄さん言うなっ! 姉妹2人共王族と結婚するとか有り得ないだろっ」
「そこでクロード義兄さんの婚約者にセシルなんてどうかな? 凄く良い子だぞ」
「第三王女を薦めるなっ! 良い子なことくらい知ってるよっ! そうじゃなくて、アルノー伯爵家の兄妹全員が王族と結婚するとか馬鹿かっ」
「でもあのフレデリック兄さんがわざわざ婚約者候補の一人として入れてるんだぞ。理由がなければ入れるわけないんだから、考慮するべきじゃないのか?」
「うっ……そ、それは……」
そう言えば、何で第三王女なんて人が俺の婚約者候補とされているんだろう。
あの美少女王子のことだ。絶対に理由があるはず。
第三王女は正妃の娘だ。だから正妃側との確執がないことを証明するという政治的な理由と考えられなくもない。
だけど、どう考えても兄妹全員が王族と結婚とか有り得ない……はずだ。
いや、俺は凡人だ。多分あの美少女王子には違うものが見えているんだろう。それが何かは分からないけど。
「フレデリック殿下、私の婚約者なのですが、何故セシル第三王女殿下が含まれているのでしょうか」
分からないので、もう直接聞いてみた。
因みに美少女王子はステファニー姉様をいつものように膝に乗せていちゃいちゃしている。それは良い。それは良いのだが、何故かヨアン殿下も美少女王子に付いてきて、すぐそこでミュリエルといちゃついている。
何だこれと言いたい。
そして王子達よ、君達もっと忙しいんじゃないのか? いや、忙しいのは美少女王子だけか。
「何故って、言ったじゃないか。愛のある関係を結べる方が良いと。俺は恋する者の味方だよ」
あれ?
美少女王子ってもっと政治面では冷たくて厳格なイメージがあったんだけど……これってもしかしなくてもそう言うこと?
悩みまくっていた俺の前に、翌朝セシル王女が現れた。
俺を見た瞬間、パッと花が開いたかのように笑みを浮かべたセシル王女に俺は……
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