第3話 友人2の場合
友人2の場合
彼も転生者だった。
この乙女ゲーム世界に転生した者の一人だ。
彼は考えていた。
乙女ゲーム「エメラルド・ジュエル」のイラストは良かった。
人物もしっかり描かれていたし、景色も細かくかきこまれていた。
だから、彼は覚えていたのだろう。
見覚えのある旅人……ストーリーでヒロインにからんできていた男達が、エメラルダにもからんでいるのに、すぐに気が付いた。
宿屋の看板娘として、評判の良いエメラルダは、誰にでも優しい。
そこが彼女の良い所であったのだが、その美点につけこんで彼女にからんでくる不埒な輩は多かった。
今日も「なあ、姉ちゃん。ちょっとばかしお話せんか?」と、その旅人の男性に絡まれていた。
控えめな性格で大人しいエメラルダを放っておくと、なかなか追い払う事ができないだろう。
だから、その光景を目撃していた彼が、武闘家の男性が割って入った。
「仕事中みたいなので、邪魔をしないで上げてくださいね」
趣味で鍛えた体の筋肉を見せつけるようにして、エメラルダと中年男の間に割って入る。
仲間内からたまに、寒空の下でも薄着でいる事を冷やかされるが、それはこのためにあった。
「ひっ、いや。邪魔なんてそんな。お邪魔しました」
エメラルダに絡んでいた男性はあっさり引き下がり、どこかへ行ったようだった。
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