第2話 友人1の場合
友人1の場合
彼女は転生者だ。
乙女ゲームの世界に転生した少女である。
乙女ゲーム「エメラルド・ジュエル」は、ヒロインが最後にエメラルドの大きな宝石を見つけて、エンディングに入る。
しかし、この世界では、まだ見つかっていない。
エンディングは本編完結後の数か月後だからだ。
だから、その前に転生者である彼女達がその「エメラルド・ジュエル」を見つけて、ヒロインではなくエメラルダにプレゼントしようと考えていた。
けれど、なかなか見つからない。
ゲームでも詳しい場所は明かされていなかったから、捜索は難しかった。
仕方なしに、「エメラルド・ジュエル」はあきらめたが、エメラルダを喜ばせたいという想いは変わらなかった
エメラルダには、夢があった。
魔法使いになって、魔法を使うという夢が。
だから、その人物……冒険家の少女は、魔法が使えるようになる話があると聞いて、いてもたってもいられなかったのだ。
エメラルダの友人は、他の転生者達に言った。
「私、召喚獣を探してエメラルダにプレゼントしたいわ」
そう述べた後、あっけにとられる他の友人達。
召喚獣は、強大な力を持った生き物だ。
一つの国を富ませたり、逆に壊滅させたりしている。
ヒロインも、ゲームではその召喚獣を使役していた。
しかし、召喚獣を捕まえる事はとても難しい事だった。
それに生き物をプレゼントするという行為を、心優しいエメラルダが喜ぶとは思えなかったからだ。
しかし発案者の友人はそれでも、と言った。
「エメラルダはもう少し幸せになっても良いと思うの。だから誰もが驚くような贈り物をしたいのよ。召喚獣を飼っているなんて知ったら、故郷の国の連中だって皆驚いてエメラルドを見なおすはず!」
彼女は、とても行動力のある女性であった。
良い事だと思ったら、次の瞬間にはそれを実行せずにはいられない質だったのだ。
翌日、他の友人達が心配になった者達が彼女の家をたずねると、すでにもぬけの殻だった。
一週間後、ボロボロになった女性がエメラルダに召喚獣を差し出したとかなんとか。
ただし、その召喚獣が冒険家の少女の方になついてしまっていたので、譲渡は失敗していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます