第7話狼の長
3人は休憩を終え、ボスの部屋に入る前に最終確認をして準備を整えた。
「いい2人とも、大きいからってビビったらダメだよ」
エイルは笑いながら2人を少し脅した。
「大丈夫ですよ。それよりはやくいきましょう」
シルクは、はやく狼と対面したいのかとても興奮していた。
「よし、じゃあ2人とも作戦通りね」
そう言ってエイルが大きな扉を勢いよく開けた。そこには何もいなくただ天井が吹き抜け状態になっている大きな部屋が広がっていた。
「えっ何にもいないじゃ…」
シルクとルーンが拍子抜けと思ったとき、遠吠えのような大きな声が聞こえその瞬間5~6メートルはある狼とダンジョン内でも見た黒い狼が現れた。
「うわっエイルさんこれですか!」
「そうだよ。まずは僕が動きを止めるから【パラライズショット】」
エイルの放った矢は狼に命中し、狼は麻痺状態になった。
「ルーンちゃん今だよ」
「はい。分かっています。【スラッシュ】」
ルーンはエイルの矢が狼に命中した瞬間にスタートダッシュをきめていたためエイルが合図をおくるときには、もう狼のふところにいた。
「エイルさん、シャドウウルフ2匹撃破しましたよ」
「じゃあ遠距離からボスを攻撃して」
「はいわかりました」
このやり取りの間にもルーンは短剣の強みである連撃で、ボスのHPの2割を削っていた。
「ルーンちゃんあと3秒で麻痺が切れるから戻ってきて」
しかしルーンはぎりぎりまで粘ろうとまだ短剣で攻撃し続けている。
「ルーンちゃんもう戻ってきて」
エイルがそう言った瞬間狼の麻痺状態が切れ足下にいるルーンに攻撃をした。しかし、ルーンはそれを避けエイルがいる場所まで戻った。
「エイルさんもう一本短剣持っていませんか」
「えっ持っているけど」
ルーンの突然の言動に少し驚くも、すぐにルーンが持っている短剣と同じものをアイテムボックスからだした。
「じゃあそれ貸してください」
そう言われエイルはルーンにわたすと、ルーンは左手にその短剣を装備した。
「よし、これでいける。エイルさんまた麻痺にすることはできますか」
「いや、多分無理だと思う。一度麻痺とった相手には2回以降は、麻痺はとりにくくなるから」
「わかりました。じゃあここから高火力の攻撃で敵を引き付けて下さい。私に考えがあります」
「うん、分かった。ここからはルーンちゃんの考えに従うよ」
「じゃあ、よろしくお願いします」
そう言ってルーンは壁づたいに走っていった。
「じゃあ僕もやらしてもらうよ。【パワースナイプ】」
ルーンがぎりぎりまで粘ったため、ボスのHPは3割ほど削れていたが、エイルの一撃は狼のHPを一気に2割も持っていった。そのとき狼が大きな遠吠えをしてシャドウウルフをさらに3匹召喚した。
「シルク、取り巻きたちをお願い」
「言われなくとも分かってますよ【ファイヤーボール】」
ルーンとシルクはリアルでも一緒にいる時間が長いため、お互いの思っていることは大体お見通しであり、ルーンが言う前にもう2匹を倒していた。そしてルーンは狼のヘイトが向いているエイルと反対の位置にいた。
(よし、これでいける)
そう心のなかで呟き、狼に向かって走りだした。
「【スラッシュ】【スラッシュ】」
狼の後ろ足に向かって2本の短剣で2回ずつ切りつけ、狼はバランスを崩した。
「今です。エイルさん、シルク」
ルーンが2人に合図を送ると2人とも最高火力のスキルをうつモーションにはいるのをルーンは見逃さなかった。
「【ファイヤーランス】」
「【ボムショット】」
2人のスキルは狼に命中し、4割以上あったHPを全て削りきった。
『レベルアップ6→7 ステータスポイント0→3』
ボスの狼を倒した3人は経験値を得てそれぞれレベルアップした。
「ふぅ上手くいって良かった」
「ナイスだったよ、ルーンちゃん。よくあの作戦おもいついたね」
「一角ウサギを倒したときのことを思い出しただけですよ。あの巨体ならバランス崩したらすぐには立てないと思って」
謙遜しながらも少し自慢気に話しているルーンはあることを思い出した。
「そういえば、シルクって【ファイヤーランス】なんて魔法使えたっけ」
「実はね、レベルが6になったとき同時に私の【火属性適性】がランクアップしたんだよ。その時に使えるようになったんだけど、やっぱりこういう奥の手っていざってときに使うものでしょ」
ルーンは、シルクが少し格好つけなところがあるのは分かっていたので納得できた。
「とりあえず町まで戻ろうか。今日は結構いい時間になってるし、この時間の森は明かりが無いとまわりがみえないし」
エイルの言葉通り今はちょうど7時であり吹き抜けから見える空も暗くなっていた。
「左の魔方陣はダンジョンの前にワープするもので、右の魔方陣は町にワープするものだから」
そういってエイルは右の魔方陣にのり、それに続くようにルーン、シルクの順で町へと戻った。
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