第8話1日の終わり

町に戻ってきた3人は、エイルの店で一休みすることにした。


「あっそれでエイルさん【月狼の毛皮】って何個手に入りました?」

そもそもの目的である【月狼の毛皮】のドロップ数によっては、途方もない作業がルーンにまっているだろう。


「まぁ今回は、運が良かったから3個手に入ったよ」


「えっそれだけですか」

ルーンはてっきり5個とか10個のような数だと思っていたようで驚いている。


「ルーン、ゲームって大体こんなものだから頑張って、あそこにあと40回くらいいってあの大きな狼を倒せば確実に集まるから」


「そんなー私まだ全然他の場所にいってないのに」

シルクの事実の羅列はルーンにとっては楽しみにしていたこのゲームの楽しみを半分近く奪うことを意味していた。


「ルーンちゃん僕もお客さんから【月狼の毛皮】を貰ったり、買い取ったら安く売ってあげるから」


「エイルさん何から何までやってもらってありがとうございます」

ルーンはまたエイルに貸しをつくってしまったと感じつつも、今回ばかりは途方もないので甘えることにした。


「あっそうだ。エイルさん、私ももっと強くなりたいので私に合うような武器とか防具とかスキルとかなにかありませんか」

シルクも同じタイミングで始めたルーンに負けたくないという意識があるのかエイルにアドバイスを求めた。


「じゃあ、トレント狩りでもしたらいいんじゃないかな。トレントは火属性に弱いし、ドロップ品で杖もつくれるし」


「そうですね確かにそれなら効率が良いと思いますし、明日からそうします」

シルクも明日からの目的ができたところでルーンとシルクは、ゲームをログアウトすることにした。


「あっそうだ2人とも、明日僕は1日店に居ないから今日みたいにかってに入らないでね」


「わかりました。今度はしっかりお金を持って何か買いにきますから」


「それで頼むよ」

そう言ってエイルはログアウトして消える2人を見送った。


「それにしても、あの2人すごかったなぁ」


「シルクちゃんはゲームのアシストが無いはずなのにモンスターに全部魔法当ててたし」


「ルーンちゃんの方は頭の回転がはやいのもそうだけど、やっぱり反応の早さ、身体のしなやかさがとんでもなかった」


「あの2人はいずれ化けるだろうな」

そう言ってエイルは2人への期待を抱きつつ、店を始めるために今日はまだ鍛冶をすることにした。






「ふぅ、リアルでは身体動かして無いのになんか疲れたなぁ。やっぱりなれてないからかなぁ」

奈月はぼやきつつもやはり楽しかったようで顔は笑っていた。


「はぁそれにしてもお腹すいた。そろそろごはん作らないと」

そう言って奈月は冷蔵庫の中を見て何も無いことに気づく。


「あーそうだ。今日は買い物してないから何にもないじゃん。しょーがない、出前でも頼むか」

そう言って奈月は出前を頼むとあることを思い出した。


「買い物は忘れてもいいけどこっちは忘れちゃいけないよね」

奈月はリビングの端っこにあるお仏壇に線香をさし、手をあわせた。


「お母さん、お父さん、私は元気でやっています。昨日は中学の卒業式だったよ。2人や親戚の人たちが死んでしまって、受験どころじゃなかったけど、高等部に特待生ではいれたから」

そう言って奈月はお仏壇をながめ、あの時のことを思い出した。

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