第3話「続・1回裏」
【現在のスコア】
太陽…得点0、着用物4
霧子…得点6、着用物10、戦利品6
1回裏ノーアウトにして早くも太陽の残りの着用物が残り4点、ワイシャツ、インナーシャツ、スラックス、トランクスのみとなっていた。
「ふふふ、
「残念でしたね、
「あら?
「何でそんなあべこべな組み合わせなんですか!上はワイシャツとかインナーシャツとかですよ!どう考えてもタイ1つで隠せるわけないでしょう?」
「あら?意外と隠せるものよ。さらしの要領で巻けばね。それより、下はノーパンにスカート1枚というのはどうなのかしら?そんな状態では風が吹けば丸見えよ。そんな脱がせ方をするなんて、あなたはいい趣味しているわね」
「う………それは…というか脱がせ方ってなんですか!今の話はもし僕が女だったらどう脱ぐかって話だから、脱がせ方ではなく脱ぎ方ですよね!」
「まあそうね。でも、脱がせ方にしても脱ぎ方にしても、女の子をノーパンノーブラでスカート1枚とワイシャツ1枚にする。そんなマニアックな状態にする考えを
「あーもー!次いきますよ!次!」
太陽は霧子の言葉を遮った。
「ふふ、そうね。無駄話はこの辺にしておきましょう」
(くそ!どうすればいい…6問連続で早打ち成功されるとかさすがに考えてなかった…引っかけ問題もダメだったし、このままじゃ初回
太陽は考えていた。どうすれば目の前にいる霧子を不正解させられるのかを。
(待てよ?6問連続…
太陽は1つの作戦を思い付いた。
「ん?どうしたの
「良いんです。それで」
「あらそう?………」
太陽はわざと出題時間の20秒が経過するのを待った。その時の太陽の自信に満ち溢れた態度に霧子は疑念を抱いていた。
「………
「さあ?どうでしょう?とにかくこれで一塁にランナーが出ました。さっそく次の問題、いきますよ」
「…私に隠し事なんて生意気ね
霧子は今、不敵な態度を取る太陽に対して無意識に呼び捨てにしていたが、霧子は自分自身ではそれに気が付かず、呼び捨てにされた太陽は全く気にしていなかった。
「問題………………」
「…
「………………」
「はぁ…
「違います。
「敬遠?…それで自らを追い詰めて抑えるつもり?本物の野球でもそんな作戦はあり得ないわ。
「さて、どうですかね?…言っている間にこれでランナーは二人です。
「くっ……良いわ。その不敵な態度がどこまで続くのかしら?」
霧子は明らかに動揺していた。いや、動揺していたというよりも、太陽の不敵な態度の理由が推し量れないことが不気味であり、何より気に入らなかった。
「では問題です………………」
「ちょっと
「………………………………これでまた時間切れですね」
これで
「………ふふふ…ふふふふふふ!
霧子は意図的に太陽のことをフルネームで呼び捨てにしていた。霧子は明らかに怒っていた。
ほんの少し前まで6問連続でホームランにし、自らが圧倒的優位に立つ相手からナメられていると感じて怒っていた。
常に冷静沈着であり、相手に対して余裕を持った態度で語りかけるのが普段の霧子の処世術なのだが、それは周囲に対する偽装であり、実際の霧子は非常に短気な性格だった。
「あれ?もしかして
「さあ?どうかしらね?でも、仮に私をこうさせるのがあなたの作戦なのだとしたら残念ね。作戦は失敗よ。私はこんなことで問題を聞き逃したり、況してや答えられる問題を答え損ねたりはしないわ」
「でしょうね。けど
(吉と出るか凶と出るか…その答えは
「ふふ、どうしたの?
霧子の言った出題待ちの体勢とは、本来の野球で言うのならバッターボックスに立ち、バットを構えた状態、つまり準備万端ということだ。
今のこの二人の対決には審判がいない。それはつまり、カウントを取る第三者がいないということだ。なので、この二人の対決は出題者と回答者が互いに準備万端という気持ちを察し合い、出題者が出題を始めるということになる。
そして今、霧子が出題待ちを宣言したことにより、出題者の太陽が回答者の霧子の気持ちを察する必要はなくなり、問答無用で霧子が出題を待っている状態となった。
これにより、太陽が出題を開始する迄のカウントダウンが…太陽にとって、勝負の分かれ目となる運命の20秒間が始まった!
20…
「そうですか。では問題…の前に一つ伝えておきます。今の
11…
「そうね。でもせっかくだから早打ちでホームランにさせてもらうわ」
9…
「ご随意に。ですが今ホームランなら即
3…
「!!!!!!!」
1…
「問題!ジビエ料理のぼたん鍋とは、何の肉を使ったものでしょうか!?」
太陽は出題開始時間の制限ギリギリで出題を開始した。
仮に審判がいて、正式に計測していたとしたら、恐らく出題開始時間は残り1秒未満というところだった。
ともあれ、太陽は出題した。
「う…あ…答えは知っているけど、でもここで答えたら
「…残念。
「くっ!
(よし!よし!!よし!!!)
太陽の心の中に歓喜とも言える気持ちが駆け巡っていた。
そして、興奮していることを霧子に悟られないように一呼吸置いてから口を開いた。
「…はい。狙いというよりは賭けでした。僕はまだ転校してきたばかりですし、クイズ部にも入部したばかりで
「………ふふふ、確かにそうね。
「そうですか、それは楽しみです。でもいつ僕が最後にパンツを残すと言いましたか?」
「え?
「はい。次はズボンを、その次はパンツを脱ぐ予定です」
「!!!く…この変態!露出狂!恥を知りなさい!恥を!」
「問題。アメリカ大陸を―――」
この問題を含め、霧子はこの後の問題に全て未回答だった。
あと2点取ってしまったら太陽の局部を見ることになる、その事が
太陽の自分自身の局部を人質にした奇策は見事に成功した。
波瀾の1回は表も裏も終了した。
新入太陽と剣ヶ峰霧子の尊厳と裸体が賭けられた野球拳式クイズ対決は、まだ始まったばかりだった。
ズガーン!!!※落雷の音のSE※
次回へ続く………
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