第2話 魔修羅流と我楼羅流

「…ないよ?」


パアン!

 レジェが無言で放った裏拳が俺の顔面にヒットする。


「痛っ!」


ズサァッ…

 たまらず地面に倒れ込む俺。


「あのね? まずそこ、寸前に打撃を吸収するために首とか捻ってるでしょ? 一般人はそんな防御テクニック持ってないから?」

「まず、サンドバックみたいに殴るのやめよ?」


 今度は倒れ込んでいる俺にレジェ渾身の振り下ろしの右ストレートが襲い掛かる。

 これは流石に危険と判断した俺は、咄嗟に回避行動を取った。


ドコォッ!

 レジェの右拳が堅い地面の岩を粉々に粉砕し、ゆっくりと立ち上がり俺をにらみつける。


「お前が突っ込むなっ!」

「怒るとこそこっ?」


「キャラがぶれるっ」

「す、すいませんでしたっ!」


 俺は素直に謝った。


「ん、素直でよろしいっ一番大事なことはわかっているようね」

「は、はあ…」


 レジェは続けてこう言った。


「さっきの回避行動、すべての技を無効化する究極の回避技『魔修羅戦空ましゅらせんくう』だっけ?」

「え? 俺十歳の時覚えたよ? 近所の裏山で修行している時に巨大グリズリーに襲われ、死にそうになった時に開眼したんだ」


「っそれよ。貴方武術の天才なのよわかってる? その奥義は私の家の『我楼羅流がるらりゅう』と貴方の家の『魔修羅流ましゅらりゅう』で秘伝とされている技で、数百年に一人覚えれる人間がいるかいないかって技なの!」


「いやでもね? お前も『龍炎氣功破りゅうえんきこうは』って奥義使えたじゃん。あれもしばらく使えた人いないって、うちとお前の両親が大層喜んでいたよ?」

「あら? そう?」


 レジェはめっちゃ嬉しそうだった。

 こいつホントに分かりやすい性格してるな。


 でもこの年の女性って普通、スタイルいいねとか美人もしくは可愛いいねって言われて喜ぶもんだと思うんだけどなあ。


 ちなみに『龍炎氣功破』は気を練り、手から凝縮された気の塊を放つ技である。気を放つ時の両手が龍の口を模しており、放たれた気は炎のように熱いためその名がついたと言う。


「まあ、私の場合毎日血の滲む努力をしてこの領域まで達したんだけどね?」

「いや、俺も文字通り血流しすぎて死にそうになったんで開眼して覚えた技なんすけど…?」


「ん、まあそこは許してあげるとして、剣士はあきらめなさい」

「え? 俺も毎日この剣を素振りして特訓しているんだけど?」


 姿 杖持ってる剣士とか聞いたことないでしょ?」

「えっといるよ? ゲームの…熱っ」


 これは炎?


 レジェをよく見ると気を練っている。


「こおおおおっ!」


 あ、やばい『龍炎氣功破』だ。


 どれくらいヤバイ技かと言うと、さっき俺が倒したドラゴンも一撃で倒せる破壊力を持つ。


「す、すいませんでしたっ。どうか怒りをっ、なにとぞ怒りをお納めくださいっっ!」


 ピタリと気を練る動作を止めるレジェ。


「あのね? 人間言っていいことと悪いことがあるの? わかる?」

「はい、今理解できましたっ!」


「よろしい。話戻すけど、貴方は魔法の才能もあるの」

「でも、魔法が使えるようになったのもたまたまだぜ?」 




 




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