最強剣士ラゴウ! と呼ばれたい…

こんろんかずお

第1話 ラゴウの願望 

「はあっ! くらえっ魔滅龍昇斬まめつりゅうしょうざんっ!」

「グオオッ…!」

 

 一体のドラゴン『土のサランバーデ』が断末魔だんまつまを上げながら倒れる。

 俺の名前はラゴウ…冒険者であり剣士でもある。

 今倒したのはドラゴンの中でも最強の一角といわれるエンシェントドラゴンの一体だ。


(ラジアンに生を受け二十年、ここまでの道のりは長かった…そう、俺は剣を極めつつあるのだ…)


 俺は愛剣の『ドラゴニックデス』を見つめながら、物思いにひたっていた。


「うそつけええっ!」


ドゴォン!


「ぶべらっ!」

 

 助走をつけたドロップキックをもろに脇腹にくらい、豪快に吹き飛び岩に叩きつけられるラゴウ。


 その衝撃で小石がパラパラとあたり一面に飛び散る。


「う、いきなりなにするんだ? レジェ!」

「それはこっちのセリフよっ!」


 レジェはビッと人差し指を立てて続けてこう言った。


「貴方がそのドラゴンを倒したのは剣術じゃないでしょ!」

「え? 魔滅龍昇斬で倒したじゃん?」


「…それは貴方が勝手につけたネーミングであって、剣術じゃないの…なの!」

「…いや? これ剣だよね?」


 俺は咄嗟とっさに切り返した。


「あんたのそれは剣ぽい形をしているけど、魔法の杖なの! よく見て見なさいよ、周りに魔力を増幅させる宝石が沢山ちりばめられているでしょ?」

「あれ? ほんとだ? おかしいな不思議?」


「可笑しいのはあんたの頭よ」


 レジェはキッパリと言った。

 

 紹介するのが遅れた申し訳ない、こいつは俺の相棒レジェ武道家だ。


 実家が道場をやっている関係で二十歳にして免許皆伝の腕前であり、家が隣同士の幼馴染でくされ縁でもある。銀髪で赤い瞳、端正な顔立ち、スタイルよしの…毒舌どくぜつのツッコミ担当だ。


「誰が毒舌のツッコミ担当だコラあっ!」


ドスッ!


「ごふぅ…」


 レジェのボディブローが決まり、俺はうめきながら膝をついた。


「お、俺口にだしてないよ?」

「…でも、思ったでしょ?」


 ポキポキと腕を鳴らしながら、仁王立ちし俺を見下ろす。

 こわっ、こいつエスパーじゃね?


「だいたいあんたねえ、色々可笑しいのよ?」

「?」

「はてなじゃねーよ! いい加減目を覚ませオラアッっ!」


ピシィッ!

 レジェのキレのある右ジャブがラゴウの顔面にヒットする。


「ぼ、暴力反対っ話し合おう…」

「てめぇが何回も何回も行ってんのに聞かねーからこっちはキレてんだこらぁっ!」


バキィ!

 今度はレジェの渾身の左ストレートがラゴウの顔面にヒットする。


「ふふ、いいワンツーだ、きっと世界をとれる…」

「そ、そお?」


 ほほを赤らめ嬉しそうに笑うレジェ。あ、そこ喜ぶとこなんだ…


 こいつは一流の武闘家を目指しているからまあね。


「真面目な話、お前が一流の武道家を目指している通り、俺も一流の剣士を目指しているんだ」

「気持ちはわかるけど、適正ってものがあるって何回も言っているじゃない…」


 レジェはため息をつきながら続けてこう言った。


「いい? そもそもの」








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