第54話

「もしもし米本?」


「おう、どうした?」


「ちょっと折り入って話があるんだけど、会えるか?」


「いいよ、何時にする?」


「夜の8時でどう?」


「よし、なら駅前のファミレスにしよっか」


なんとか会う話をできた、どうやって話そうかかなりドキドキする、今まで秘密にもしてたからな


とりあえず夜まで寝てよう、時間感覚は向こうに合わせてあるからな、ただ昼間に寝られるところって意外にも少ない


(昼寝屋とかしたら儲かるかな)


あまり需要のなさそうなことを考える、Early Check INのビジネスホテルに泊まる、こっちに何回か泊まることになるから1週間分予約しておく。


夜の8時5分前に待ち合わせのファミレスに行くとすでに米本は来ていた。


「お待たせ、時間は大丈夫か?」


「真剣な話なんだろ?時間なんて気にするな」


その言葉に後押しされて、今までの経緯を説明した、異世界って言うのは抵抗あるのでこう説明した


[祖母の家に謎のドアがあり、それを潜ると文化の遅れた地域に行き、衣服は革と麻のみ、絹と綿がないこと、野生動物が跋扈している為物流が進化してなくて、車も電車もないこと、香辛料が余りなく塩と胡椒は希少であること、鉱石の加工が未熟で硬いダイヤモンドは逆に二束三文になること]


「すごいビジネスチャンスを掴んだな、それならダイヤを大量に持ってることも綿の肌着をたくさん欲しがった理由も納得だ」


「理解が早くて助かる、あれば売れる場所だからな」


「戦後の日本みたいだな」


その後ヒルダから言われたことを経済戦争の話をした


「帝国30万人分の生活の基盤をこちらに依存させないもいけないんだよ、その為にも今までの何倍もの物資を向こうに用意しないといけないんだよ」


「車も列車もない地域でそんな大量の物資どう運ぶんだ?」


と言われた処でマジッグバッグを取り出して、実演した、なんでも、いくらでも、入るバッグを見て驚いていた


「魔法のバッグじゃねえか、文化の遅れた国って異世界か」


結局すぐにばれた、異世界なんて知ってるんだな、秘密にしてるとなんかモヤモヤとしてたけどこれでやっと肩の荷が降りた、今度からは今まで以上に頼ろう。


「お前が異世界ってもんを知ってるとわな、それでどうしたらいいと思う?」


「現実的なやり方としては、まずは衣類は古着でいいんじゃないか?コストも安いし、大量に用意できるだろう、調味料は段々とでいいだろ、いきなり味が変わっても受け入れられないだろう」


違う人の意見を聞けるのって良いな、俺なんかよりもよっぽど柔軟性がある、意見をどんどん出してもらって参考にさせてもらおう


「色々と参考になる」


「後依存させるなら俺たちしか用意できなくて安価で主食となりえるものでないとダメだぞ、日本人にとったら米とかな、確かにパンとか麺とかあるけど、米のない世界なんて考えられないだろ、だから難しいんだよ」


向こうにもパンはあるのだから小麦粉はあるのだろう、それを米に変更できればいいが、無理だろうな、徐々に変革していくしか道はないか、ヒルダにもこの意見を通そう。


「そんなすぐには無理ってことか」


「その通り、日本がここまでパンの割合増えてきたのって戦後からだろ?70年掛かってるんだぜ、しかもまだ米の方が多いだろ?」


「移動手段として自転車はどうだ?ゴムさえあれば作れそうだろ?腕のいい鍛治職人とかならなんとかならないか?」


アステルなら作ることも不可能ではないか、原物を何台か向こうに持ち込み分析させる、列車や車は現実的ではないな


「1人心当たりが居るからやらせてみよう」


「取り敢えず用意するのは大量の衣服、そして調味料、主食は米か綿かパスタ辺り持っていって何が合うかだな」


「手伝ってくれるってことでいいのか?」


「儲かりそうってのもあるけど、面白そうじゃん、俺らがその国の文化変えるってことだろ?靴屋の営業の話知ってるか?」


かなり有名な話だからもちろん知ってる、


[2人の靴の営業が未開の地に行った、1人目の靴屋は原住民が靴を履いてないことにショックを受け、靴を履く文化がない地に靴は売れないと撤退、もう1人は靴の文化がないから大量に送るように指示、逆の発想での話だ]


今回俺たちがやろうとしてるのは文化を作ること、米のない国に米の美味しさを、綿の肌触りを、調味料により料理のバリエーションを


うまくいけば大成功、失敗したら大損だ。しばらくは異世界とこちらを行ったり来たりすることになるだろうな。

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