第17話

私の名前はテレサ、このファステルの町で冒険者をしている


15歳で成人になり3人兄弟の1番下の為いつまでも実家に居ると迷惑がられる為ファステルに来たのは1年前だ


この世界では手に職がない者や後継ぎでもない者は冒険者となりなんでも屋をするしかない、力もない魔法もまともに使えない、上品な家の出でもないのでメイドとかも無理だし


かと言って料理や裁縫もできるわけでもない、結婚するにも相手が居ないしね、幼なじみのジェリーは騎士になると王都へと行き、その後手紙もよこさない。


田舎の子供が簡単に騎士になんてなれるわけもないのだ


家の修理の手伝いや、飲み屋の給仕、そこまで重くない物の運送(マジックバックがない為自分の手)とかしたけど、余り稼げない


最終的には薬草採取をいつも受けていた、たまに上級薬草の"ヨモギ"や最高薬草の"アロエ"を、見つけることができるが滅多に生えてはいない。


30束ぐらい毎日集められると朝昼晩と3回食べられて良いんだけど、雨の日はお休みしないといけないし、節約を常に強いられる。


(服も欲しいな)


着ている服は継ぎ接ぎだらけ、汚れも目立つ、洗濯は洗剤なしで川の中で済ます、汗や草の汁が水だけで落ちるわけはないのだ


(1年頑張ってきたけど、良いことなにもないな、王都にでも行こうかな)


人が多ければ自分にも合った仕事を見つけられる、現状で生活を充実できない奴は環境が多少変わったところで充実出来るわけがないのだか、それは当人は理解できない。


その日も暗くなるまで薬草を採取し、町へと戻り、ギルドで薬草を納める


「今日もハズレはないね、全部買い取れるよ、テレサはもう薬草採取のスペシャリストだね、これからも頼むよ」


銅貨30枚を受け取る、今日は調子が良かったので60束集めることができた、毎日これだけ集められたら多少は潤うが


平均月収が銀貨10枚のこの町でテレサの平均月収は銀貨5枚、半分である、生活が苦しいのは当たり前


とてもじゃないが宿には泊まれずスラムで野宿だ、女の子が1人で野宿してても襲われないのは、この世界で犯罪に対する罰は重くて、見つかれば一生鉱山送り、そんなリスクは犯す者は少ない。


「一緒に護衛任務やる奴は居ないか?」


ギルド内で響き渡る声で呼びかけている奴が居るが誰も反応しない


「1週間で銀貨3枚出すぞ 対象の商人はあのムスタングだ、戦争準備の為武器を大量に王都に運ぶ護衛役だ」


今度隣の国(ワララント帝国)に攻め込まれるのはこの国では子供でも知っている話だ、防衛の為に王都に武器や傭兵が大量に流れ込んでいる。


(わたしに護衛なんてできないもんな、銀貨は欲しいけど)


物欲しそうな目でそちらを見ているとその男として目があった


「お嬢ちゃんどうだ?」


「いえ私戦えないから」


「戦うのは俺がするから大丈夫だ、先方の条件は3人以上だ、1人は俺の相棒が居るがもう1人居ないといけないからただの数合わせだ、道中の飯も出すぞ」


ご飯代も浮いて戦わなくて良くて銀貨3枚が1週間で、私にはもったいないぐらいの好条件だ、受けてもいいかな


「戦わなくてもいいなら、受けたいです。」


「よし、それなら明日の朝7時にギルドの前に集合だ、その前にパーティ登録はしておくぞ」


受付で登録をした、男の名前はグルマン、もう1人の名前はヒルデガルド、パーティ名は夜半の狼だ


「ムスタングには今日初めて嬢ちゃんがパーティに入ったことは内緒な、急増パーティなんて信用無くすから」


そんなもんかと思い肯く。


次の日の朝集合時間の10分前に行くとムスタングもグルマン達も揃っていた


「うちのパーティ自慢の凄腕のテレサだ」


グルマンがムスタングさんに紹介する、私はムスタングさんと挨拶をする、するとムスタングさんが


「じゃあ行くとするか」と


馬車の中には私とムスタングさんとヒルデガルド、業者台にはグルマン、王都に着くのは7日後の予定


1日目の夜は宿場町に着くことなく夜営となった、夜番は私が最初、次がグルマン、最後がヒルデガルド、ムスタングさんは雇い主の為夜番なんてやらなかった。


2日目の夜は宿場町サマの村の宿屋に泊まった、滞在費はムスタング持ちだか、飯代は出ない、グルマンの用意してくれた堅いパンと干し肉で済ませた。


宿屋に泊まっては居たのだが、グルマンは夜番をするように言ってきた、護衛の常識は私にはわからなかったので素直に受けた


自分の時間が終わり、朝まで時間が残り少ない為ぐっすりと寝た、眠たかった為普段より深く寝ていた。


朝になりムスタングさんが叫んだ


「わ わしのバッグがない、誰か見た者はおらんか」


ムスタングさんがいつも持っていたバッグが消えていた、それと同時にグルマンとヒルデガルドも


夜中の内に持ち逃げしたようだ、そこで私は初めて騙されたのだと知った


残された私も疑われ村の捕吏に勾留され、ムスタングさんと一緒にファステルの街に戻った、私は足かせをされた状態で


ムスタングさんは私を疑っていたが、ギルドの受付のお姉さんが弁護の証言をしてくれて、一味だと疑念は免れたが、商品を弁償しないと私は犯罪奴隷として鉱山送りになる


いつも私が頑張って薬草採取をしていたことを受付のお姉さんが見兼ねてギルド長に相談してくれて


奴隷店のブキャナンが弁償してくれた、犯罪奴隷は免れたが借金奴隷だ。


受付のお姉さんにはいつか恩を返したい。

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