第16話

「これから仕事をしてもらう前に聞いておきたい」


「なんなりと」


「なんで奴隷に落ちた?」


先に事情を聞いておかないと今後どう接していいかわからない、悪いことをして奴隷になったわけではないだろうがな


「私は冒険者として生活しておりました、戦闘は好きでもなく、得意でもない為ソロで薬草収集をメインにしておりました」


今後から薬草の入手はテレサに頼んでもいいかもしれんな


「ですが薬草の買取価格は低く10束集めても銅貨5枚にしかならず」


ん?俺いつも3束で銅貨3枚だったよね、買取価格は半分か、益々テレサに薬草取りに行かせようと思った。


「毎日銅貨15枚程度しか稼げなかったのです、生活費でいっぱいいっぱいの処冒険者ギルド内で声を掛けられました」


(かわいいからナンパでもされたのかな)


「一緒に商人の運送護衛任務をしてくれるメンバーを探している、1週間で銀貨3枚ほど、渡せるがどうかな?パーティ登録は必要だが」と


普段は1週間で銀貨1枚程度、それが3倍なら乗るだろうな、


「でもそれがそいつの手口だったのです、護衛して3日ほどすると商人の荷物を持ち逃げしたのです。その責任を取らされて奴隷になりました。」


「でもマジッグバッグは家族以外使用できないのでは?荷物持ち出してもそいつの手には入らないだろう?」


「一般的な常識はそうです、闇ギルドに頼めば取り出してもらうことができるのです」


そんな裏技があったのか、俺も取られないように気をつけなければ、今バッグの中には300個のダイヤが入っている、時価総額10億円以上だ


「事情はわかった、任せたいのは店番だ 1年無事に勤め上げたら解放する」


「1年で良いのですか?普通は5年や10年は当たり前ですよ、シルキーやフレイヤに教えてやりたかったです。」


3人の候補の内残りの2人は俺がみすぼらしい格好だから、余りお金を持ってないのかもと思っていたらしい


確かにこっちに来る時はいつもジャージだからな、今は5月だから白のジャージだ、冬は黒、春は白、夏はTシャツに下は白のジャージ、秋はカーキ色のパーカー


これを複数枚持ちローテーションしている、服なんてなんでもいいと考えていたが、見た目で判断する奴も一定数居るのか、奴隷にとったら自分の人生が関わっているから見た目の判断は大事だ


舐めているなんで思って悪かったな、良い持ち主と悪い持ち主では待遇が違うだろうからな、余裕ができたらあの2人も買うことにしよう


「普段は俺は店に居ない、この町にも居ない、5日に1度ぐらいの間隔でこちらに戻ってくる、いつもは昼間はお店で店番、夜は下の部屋にベッドを置くからそこで寝てくれ」


「私の実家は田舎で小さなお店をしてました、時々店番をしておりましたので、すぐに務まると思います。」


経験者だったのか、いい買い物をした。奴隷は命令をするとそれ以外のことはできなくなり、違反すると全身に痛みが走るようだ


「普段はこの店の外に出ることを禁ずる、昼間は1時間だけ、夜はお店を6時に閉めてその後1時間だけ食事を取る為に外出を認める、俺が同席していればこの条件は解除する」


「理解しました」


奴隷が理解をすると命令の誓約がなされる、破れば痛みが


(これMの人には効かないかもな)


テレサがMでないことを願う、後は食事代を渡し向こうに帰るとしよう


「銀貨3枚渡しておく、これで1週間の3食賄え、足りなければもう2枚渡してもいいがどうする?」


「3枚あれば充分です」


「なら3枚で命令する、お店の商品もお金も盗ることを禁じる」


大丈夫だと思うが一応命令はしておかないとね、何があるか分からないし


「じゃあ俺は移動するからその間のことは任せたよ、値段は木に書いてあるし、釣り銭はカウンターの下に置いてあるからね」


「はい、今後共宜しくお願い致します。」


現代に戻ると携帯にメールが届いていた、米本からだ、明日会社で宝石商と会う約束をしてくれたようだ


(15億もあったら何に使おうかな)


まだ商談もできておらず売れてもいないのに楽観的に考えていた。


次の日会社の会議室にて、米本と一緒に中近東の人物と通訳の人が居た


「初めまして、私アラブで宝石商をしております、サダムと申します。」


「ご丁寧にありがとうございます、私は杉山です」


と名刺を交換する


「杉山さん、アラブ語うまいですね」


念の為翻訳補聴器を装着していた、この補聴器何語でも対応できるようだ


米本は驚いた顔をしていた、アラブ語ができるなんて一言も説明したことがなかったしね


早速向こうで入手したダイヤを披露した、さすがに300個の並べるほどバカじゃない、まずは3個だけだ


「5カラットはありそうですね、高品質なものであれば1個2000万円で買取りますが」


とルーペを取出し鑑定を開始する


(2000万?300個あるから、、、60億か)


「研磨技術が拙いですね、1個500万円で如何ですか?」


500万でも充分な金額だ、だが最初に2000万の数字を聞いてしまったのでかなりのがっかり感、相手は専門家だ、米本が紹介してくれた以上大丈夫だろう


これがヒルダが紹介してくれた人間なら信用できないが


「はい、それでお願いします、今回は3個ですが、定期的にお願いすることは可能ですか?」


「こちらもそれは大歓迎です、月に10個程度でしたら資金は足りますよ」


1500万円もらい、米本に1割、会社に1割、自分のところには1200万円手に入った、異世界投資分を回収するだけでなく、充分お釣りがもらえることとなった。

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