第12話
お店の入り口の扉を全開に開き、お客が殺到してもいいように間口を広げておいた
開店より5分、10分、1時間、うん、誰も来ない、ばあちゃんは不定期に店をしていて開いてる時はラッキーとこの前の男性は言っていた、ってことは扉が開いてれば営業をしていることはわかると思ったが甘かったようだ。
「お兄ちゃん おはよう、またお店始めたんだね、お客さん誰も居ないね」
リリムが来て声を掛けてくれた、悲しくなるようなこと言わないで欲しいな、事実なだけに否定もできないことがもっと辛い。
「初日は俺の知り合いだけに声を掛けてあってだな、まだプレオープンなんだよ」
「へえ、そうなんだ、私何にも聞いてないけど、お兄ちゃんそんなに知り合い居るんだね
私を無視できるぐらいたくさん」
いや、こっちの知り合いってリリムとヒルダとギルドマスターのライトさんだけだ
「声を掛けようと町中走り回って探したが、どこに住んでいるのか聞いてなくて見つけることが」
「言ってなかった?私が住んでるのは西地区だよ、スラムがある南地区と商店街がある中央区の間なんだ、普段お花を売っているのは中央区だからこっちは何度かお兄ちゃん見たけどこっちに気づかなかったみたいだね、それでも探してくれてたんだ?」
はい、ウソがばれてました、その場限りでのウソなんて通用する相手じゃありませんでした
「もちろん気付いてたよ、でも仕事の邪魔しちゃ悪いと思って、夕方ぐらいから探そうと、、、」
「もういいよ、もうめんどくさいよ、それよりお客さん居ないようだから私知り合いに声掛けてあげようか、このままじゃまた閉店しなきゃだもんね」
「はい、お願いします、リリムの知り合いなら2割引にするから」
「割引しなくていいよ、物は良いものなんだよね?」
「もちろんだよ、俺が厳選した粒ぞろいだよ」
ホントにリリムは良い子だな、ウソをついてごまかすなんて俺はひどい大人だな
「その割引分の2割、私に頂戴、お客さん紹介するんだから、それぐらいは良いよね」
俺の改心の気持ち返せよ、知り合いがお得に手に入れることより自分の利益、強い子だな
「わかったわかった、たくさん紹介してくれたらまとめて手数料払うよ」
その言葉を聞き、リリムは外へ飛び出して行った、ものの5分ぐらいすると小さいおっさんを連れてきた、おっさんを店に残し、また町へと戻って行った。
小さいおっさんは身長は130センチぐらいだが、顔は濃い アゴの下にも鼻の下にもわしゃわしゃとヒゲが生えていて、おっさんってことはわかる、多分ドワーフかな
「うまいエールとポーションがあるって聞いた、あるか?」
ドワーフと言えば酒、期待を裏切らない
「もちろんありますよ、こちらです」
と缶ビールとポーションを見せた、ドワーフは缶ビールを持つなりフタを開けその場で飲みだした。
「ぷはぁー、のど越しが最高だな」
「ちょっとちょっと まだお会計も済んでないのに何飲んでるんですか」
「味見をさせずに売ろうとするなんて、商人の風上にも置けない奴だな」
こっちの世界って味見必須?俺焼肉屋で味見なんてしなかったけど、なめられてる?
「で、どうなんです?買うんですか?買わないんですか?」
これで買わないなんて言われた日には単なる飲み逃げだ、いや飲まれ逃げか、よくないわ
「全部くれ、この柔らかい鉄も欲しい」
柔らかい鉄ってアルミ缶のこと?そんなのゴミにしかならないのに、買ってくれるならいいや
ビールは1ケース用意してきた、1人の客に全部売れることは想定していない、よくバーゲンではお1人様○点限りってあるが、あれは特価品の場合だ、期間損失なんて作る余裕はないのだ、残らず売ってしまおう。
「24本なので銀貨1枚銅貨20枚です、入れ物の鉄は、、、」
いくらにしよう ゴミに価格設定なんて良心が、、うん、痛まないね、叩き売りでいいや
「銅貨10枚です」
「そうか、24本だから銀貨2枚と銅貨40枚だな、安くて助かった」
いやいやまとめて銅貨10枚だったんだが、中身のビールよりも高く売れてしまった。
「ポーションはいくつご入用ですか?外に出しておくと痛むのでバッグの中に入ってます、必要な個数だけ出しますね」
「そうだな、20個ほどもらおうか」
全部で銀貨6枚銅貨60枚の売り上げになった、1人で6万円以上の物を買っていくなんて剛毅だな
おっさんは笑顔で帰って行った、帰り際にビールの追加だけ頼まれた。
こっちの世界って物価が高いのだろうか、飯屋も高かったし、まあ売れればなんでもいいか。
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