第7話
向こうの時間に合わせ夜の8時に起きる。
前回よりも大量の荷物があるが、今回は教えてもらったマジックバッグを持って来ていたため
かなり運ぶことができた
(これ重さなしで持てるんだ、現代で運送業やればかなり儲かるんじゃないかな、3万円程度でトラック1台と考えたらかなりいいな)
現代の道具を向こうに持ち込んで販売するだけではいずれ日本円が底をつく、向こうの商品でこちらで利益を上げられるものも探していかないと
倉庫の中から向こうに行くのだが、暗い中歩いて行くため、足をぶつけながら進んでいく
(一度ここ整理しないと体が傷だらけになるな、ポーションでも使えれば問題ないのだろうがまだどうやって手に入れるか知らない)
夜から朝にいきなり変わり、眩しさの余り目が眩む、時差ぼけも辛い
いちいち寝るためだけに帰るの面倒だ。こちらで生活基盤を作らねば
(やっと異世界探索だ)
決意を新たにお店から外に飛び出した、まあ普通にドアから歩いて出て行っただけだが
探索と言っても散歩に毛が生えた程度のことしかできない、何しろ現地通貨がないのだから
(買取できるお店でも探してまずは通貨獲得だな)
今回用意した商品と前回持ってきた商品、砂糖と塩も含めてだが全部バッグに入れた
町中をふらふらと歩いていると声を掛けられた、薄汚れた皮の服を着た中年男性だ
「兄ちゃん、ずいぶんと変わった格好しているが、どこから来たんだ?ここら辺じゃ見ない服だな」
お店から外を見ている時に服装に関しては確かに違和感があった、こちらでは全体的に生地は
皮か麻とかで、一言で表すと”茶色”だ、俺が身に着けているのは上下黒のジャージ、つまり綿だ
「祖母の遺品整理でちょっと遠くから来たんだ、もうお店は閉めてるが、あそこにあるお店やってた人知ってるか?」
歩いて来た方を見て、祖母の店を指差した。
「ああおばあさんがやってた”こんびに”か俺も何度か行ったことがあるけど、毎日やってなかったみたいで開いてる時はラッキーって思って買ったけど、ここ数年開いてるのは見たことなかったな、知らなかったが亡くなってたんだな、お気の毒様」
こちらとあちらとの二重生活じゃ毎日お店開くのには無理があったのだろう、こんびにって名前の割に不定期でやってたらしい、身内にばれてないってことは慎重にしてたのだろな
「わざわざ済まない、亡くなったのは3年も前だ、気にする必要はない、今度は俺が店を引き継ごうと今準備しているところだ、こんな時に相談に乗れるような場所ってあるかな?」
「それは楽しみだ、開店したら絶対に行くぜ、おばあさんのポーションは物が良くて安かったからな、もちろんポーションも売るんだろ?早く開けるといいなだったら商人ギルドに行けばいいさ、経営の相談とか従業員の雇用、税金の相談も乗ってくれるぜ、この先を200メートルぐらい歩いて、焼き肉のミックの店を右に曲がって3軒先だ」
(ポーションの目処が立ってないことは内緒にしておいた、わざわざネガティブキャンペーンを行う必要はない)
「ありがとう、助かった、お店で待ってるよ」
お礼を言うとバッグからスルメを出し、男性に渡した、遠慮はされたが最後には受け取ってもらえた
(このバッグたくさん入って便利だけど、探すのが逆に大変なんだよな)
とりあえず言われた通り商人ギルド行ってみるか、教えてもらったミックのお店はすぐ見つかった
良い匂いが辺りに漂う、屋台ではなくちゃんとしたお店なのだが焼いてる所は外だ、匂いで客を釣っているのだろう、焚き火の上に鉄板を敷いてその上で肉を焼いている
もちろん俺も通貨さえあればその客の1人になっていたことだろう、しかし
(あれでは火が不均等になり、肉がうまく焼けないだろうな、もったいない、炭を使えばいいのに
こちらではやはり炭は一般的ではないらしい、黒い薪の正体がわかった、炭は正解だな)
持ってきた商品のヒットを確信した瞬間であった。道に迷うことなく商人ギルドと思われるお店
に着いた、看板には文字でなく、ロゴが標記されたいた、人が両手を前に組み笑顔?の絵だ
(微妙なロゴだな、デザイナーってこちらでは居ないのだろうか)
迷わずウエスタン風の扉を開け店内に入るとカウンターに1人の女性が立っていた
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょう」
銀髪の身長160センチほどの おそらく年齢は30にはいってないであろう、ほっそりとしていた綺麗な女だ
(よしっ交渉ごとは得意だ、余り無知がばれないようにうまくもっていこう)
「私の名前はナオトです、店を再開するために手続きに来ました、店名は”こんびに”です、ご存知でしょうかしばらく訳あって休業しておりました、この町では繁盛していたと思います」
あくまでも手続き、相談なんて言ったらいくら取られるかわかったものじゃない
「こんびにですね、当然知っておりますよ、お待ちしてました、最近人の気配がなくてこちらとしても
心配していたのですよ」
「そうですか、前の経営者は祖母でして、今回私がお店を相続していこうと思っております」
「とても良い話ですね、前はとても繁盛してまして、ギルドとしても喜ばしいことでした、えっと、、相続するってことで宜しいのですね?」
「はい、相続でいいです、祖母の地盤を引き継ぐ所存です」
(二世政治家のセリフかよ)
「それでは早速お手続きに入っていきます、申し送れました副ギルド長のヒルダです、今回私が手続きを承りますので、宜しくお願いします、さあ中の応接室へどうぞ」
後ろにある3つの扉の1つへと誘導した、流石に商人ギルドだすぐに商談に入れるように
入り口からすぐの所に何個かの応接室の準備がある。
「ヒルダさん、受付の人居なくて大丈夫なんですか?」
「はい、商人は朝の内は仕入や開店準備でまずこちらに来ることはないです、商談は夕方から夜っていうのがこの世界では常識なんですよ、午前にいらっしゃる方は素人の方ばかりです」
(既に素人ってばれてるじゃん、しかも今言ったのって俺に対しての牽制?交渉も思いやられる)
最初の勢いはなりをひそめ、ドキドキとしながら応接室に入って行った。
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