第28話「え、中間テストあるじゃないですか?」


 そして、来たるゴールデンウィーク初日。


 今年のゴールデンウィークは運もよく、中もない九日間。開校記念日と謎の振り替え休日によりできた奇跡の年だった。まだまだ高校一年生なので俺としても遊ぶ日が増えて嬉しいはずなのだが————残念ながら、そうはいかない。


 ブルル……ブルル……。


 朝10時、布団から起き上がった僕の隣で次世代スマホが鳴っていた。


「あい、もしもし……?」


『お~、おはよ裕也! 今日駅に遊びに行かねえ?』


「——今日? う~~ん、どうしよ……俺、いろいろあるかな~~、どうしよう……」


『え、じゃあ今日なんかあるの?』


「……別に」


『じゃあいいじゃねえかっ』


「でもなぁ……テス勉もしなきゃだし、なぁ……」


 俺は溜息をつきながら、嫌そうに答える。


『はぁ——まーったあれか、どうせあれだろ? めんどくさいんだろ?』


「んっ——なんでバレた?」


『馬鹿言え、お前と俺がどれくらいの付き合いか知らねえのかよ』


「——それはまあ、最近知ったし?」


『んぐっ……あのなぁ、親友としては結構きくぞ……』


「へぇ……陽介って俺の事親友だって思ってるのかぁ……ほうほう、わかったわかった……」


『——お、っおい! お前まさか……俺は友達じゃないっ——と!?』


「いや、そうは思ってないけど?」


『じゃあ言うなっ! びっくりさせんな‼‼』


 まあ、陽介がしっかり友達してくれるのは俺としても嬉しい限りだ。なんせ、友達少ねえし。


「————はいはい、分かったよ……行くよ」


『だよなっ! 俺は友達だよな!』


「分かったから、あんまりそう言うな、なんか友達っぽくないぞ」


『へへっ。じゃあ昼には札駅のオブジェのとこな~~』


「白いほう?」


『そそ、そっちの方な~~』


「了解、じゃあな」


『あ~~い』


 ブチ――――、ツー、ツー。


 にしても楽しそうだな、こいつ。俺と遊ぶのがそんなに楽しいのか? それとも女と遊ぶための口実に俺を呼んだって説もあるな——くそったれだな、だとしたら。


「はぁ……一時間後には出なきゃだな……」


 一息ついて、適当に朝食を済ませる。

 まったく、高校一年のゴールデンウィークが始まったって言うのに忙しすぎるだろ。明日には合宿あるらしいし、費用は部費で払ってくれるらしいけど、時間は金ではどうにもならないしなぁ。本当は家でゆったり小説読んで書いてを繰り返したかったぜ。


「ごちそうさま」


 誰もいない部屋で独り呟き、皿を洗う。

 

 俺は鏡の前に立っていた。


「こんなもんかな」


 服選びをするのは久々だ。最近はずっと学校だったし、だっさい学ランしか来ていなかった。おかげで私服の数が少なくなっていた。


 着用したのは中学生の頃から着ている黒のチノパンに白いシャツ、そして上から軽いパーカーだ。まあ、センスは悪くはないだろう。それなりのファッションだ、これなら馬鹿にもされない。


「いけるっ」


 鏡の前で意気込んだ。


「いってきます」


 そして、俺は小走りで地下鉄の駅まで走っていった。



~~~~~~~~~~~


「いやーーん」


 耳障りな声だ。


 ―—といっても、昔はよく聞いていた。


 俺と裕也と。

 

 何と言えるわけでもないような性格をしている彼女は不思議で、元気のいい、そして——腹立つことにルックスもいい。


 ふんわり、それでいてキリッとした真黒な瞳、リンゴのように鮮やかに赤いショートボブ。


「言っとくが俺は何もしてないからな?」


 俺の背中にその大きな胸を押し当てながら、後頭部越しに漫画を読む彼女は成神翔子。俺たちの幼馴染だ。


「でも、押し当ててるって言うのに避けないじゃん?」


「避けてないんじゃない。避けれないんだ」


「……どゆこと?」


「はぁ……俺が今避けたらよぉ、その胸に手が当たって罪を背負うことになる―—アンダースタン?」


「————私ってそういうことする女に見える?」


「見える」


「どこがよぉ……」


「そうやって胸を押し当ててくるところがな。前にもいたんだよ、せっかく難破してやったって言うのにさ、すぐに胸とかくっ付けてきやがる女がな。きしょい、まじで。俺はくっつかれるのが嫌いなんだよ」


「ってことは、私も嫌い?」


「お前は幼馴染だからな、そこまでじゃない」


 俺がそう言うと彼女はにへへ~~と笑って余計に胸を押し付けてきた。


「マジで揉むぞ?」


「それは殺す」


「どっちだよ」


「? 私の意志で押し付けてるけど~~、陽介に触られるのは嫌でしょっ」


 妙に傷つきそうなこと言ってくる。

 俺にも心はあるんだぞ。よく、裕也から女たらしやら陽キャやら天才やら言われるが俺はそんなえらい人間じゃない。努力をしているんだよ。


「あっそ」


「え~~、興味ないの~~⁇」


「うざい―—そんなに触ってほしいのか?」


「いや」


「じゃあ、離れろ」


 そして俺は成神翔子の肩を押す。


「うわっ」


「……それで、どうしたんだよ。俺の家に急に押しかけて来てさ? もう10時だぞ、そろそろ30分くらい経つけど?」


「てて……え、うーーんとね。私、彼に告白したいの」


「彼?」


「うん、相坂裕也に」


「え、翔子が裕也に?」


「……そうだよ、不思議?」


「あ、いや、別に……」


「だから、今日一緒に遊ぶんでしょ? 私も連れてってよ」


「翔子を連れてく……ね」


「いいでしょ? あれだよね、どうせ小泉さんとかも来るんでしょ?」


「そ、そうだけど……何で知ってる?」


「聞いた、教室で」


「おい、盗み聞きは良くないぞ」


「聞いてない、聞こえてきただけだもん? いいでしょ?」


「……分かったよ、それで? ―—どうせ手伝えばいいんだろ、翔子と裕也を二人きりにしろとか」


「お、ご名答~~」


「はぁ、面倒くさいな」


「いいじゃんっ! 腐れ縁だしね!」


 そして、俺たち二人は家を後にしたのだった。



<あとがき>


 昨日は失礼しました。


 あまりにもエヴァロスが激しくて、何も書けませんでした。今日からはなるべく頑張るので今しばらくお付き合いください。


 実は昨日、ピクシブの「fanao」アカウントの方でエヴァの二次創作を書いてまして……それが理由でもあります。どうしてもアスカとシンジのハッピーなお話を書きたくてアスカ好きとして頑張ってしまいました。2500文字くらいあるので興味があれば是非、「fanao」もしくは「https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14827614#1」で検索してみてください(カクヨムでは著作権の都合上書けないので……あと、割と好評でもうすぐ1000pvなので!)。


 では、また!

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