第27話「分かった、入りますよ」
フリーズ先輩を前に、奥で作業をしていた結城先輩はこう告げる。
「あ、昨日ね、し―—部長がニコニコしながら相坂君の入部届出してたけど」
「え——」
「——っひゃ!?」
俺は先輩のセーラー服の襟を掴んだ。
逃がさまいと思い込めて、強く掴んだ。
しかし、その力とは反対に先輩が振り払おうと力を入れたが俺の腕はそんな力には動じない。これでも運動部だった俺の腕を舐めないでほしい。
「おい、待ってくださいよせんp——じゃなくて犯罪者……」
「——じゃなくてっ、ははっ、犯罪者ですか⁉ わた、私は何もやってないよっ!」
「へへーーん、そうですか、そうですか、犯罪者は総じていつもそう言うんですよね先輩?」
「ななっ! や、やって————ない……ぞ!」
顔が真っ赤になり、唇が震えて「やってない」の一言ですら上手く口に出せていなかった。
勿論、根拠はある。
嘘であるのは間違いないと俺の勘が叫んでいたから、ただそれだけ。それに、この人の感じならそれをやっていても今更驚きはしない。
「今更、嘘ですか——先輩?」
「う、そ……だなんて……」
「へぇ、あくまで否定すると?」
「べ、別に———でもっ、やってない……しっ!」
「ほぅ……あくまで、やってないの一点張りと、結城先輩書いといて」
「あいあいさ~~」
「————なんで取り調べっ⁉」
なんで——なのかは俺はあえて言わない。てか、言うわけないし、言わなくても分かるだろ。
「さて、自分で考えてはいかがでしょう?」
「んぐっ―———」
「あはは~~、さすがに自白したらどうかな、椎奈?」
「んぐっ―———や、やってないもん……」
喉元まで出かかっている何かをどうにか理性で抑えつけるのが目に見えている。普通に見れば可愛い姿なのだが、正直、今は違う。
いくら俺でも勝手に入れられては困る。
「……黙秘権と」
「黙秘はしてないもんっ!」
「でも、言ってないし、そう言うことですよね?」
さらに圧力をかけていく。
まるで、部活の顧問である監督がすべてはお前のせいで試合に負けたというように(実体験?)眼力を高めていく。
「っ————やって——なぃ」
お、主張が弱まってきたぞ。若干涙目になっているが俺はその手を緩める気はない。
——小説を読んでくれている人がこんな風になんでもやっていいと思っている。そう思ってほしくないという真面目な意味を込めてだ。
勿論、今週一週間は結城先輩に小説を読んでもらったこと以外は全部、先輩の雑用とご飯作りしかしてなかった―—その恨みを込めてというわけではない。
ああ、もちろん、それが理由じゃないぞ。
「はぁ……先輩、白状してくださいよ」
「……だって」
「だってじゃありませんっ、俺はまだいいですよ別に。でも、先輩がこうやって他の人にも強制してほしくはないんですよ」
「……んぐぐ…………だって、その」
「その?」
「相坂君が……楽しいかなって思ったからぁ……」
「うん、それはまぁ、事実ですよ?」
肯定すると、それまでは申し訳なさそうに涙を浮かべていた先輩の瞳の色がすっきりと明るくなった。
「ほんとにっ‼‼」
「でも、本人に了承をとらないのは違いますよね?」
「そ、そそ、それは……でも、うん……」
「もうやりませんか?」
「うん……」
「ならいいですよ」
俺が許すと先輩は肩の荷を下ろして、溜息を吐いた。
部長が新人に、というか下級生に注意されているところ見ていた二人はなかなかの顔をしていたが別に俺は何も悪いことをしていないからいいだろう。
——というよりもいいことだしな。
「そんなに入って欲しいのなら、正式に入りますよ」
「まじ!?」
「お、ほんと! 新人君!」
「はい、入りますよ。俺にできる事なら何でも言ってください」
「「うんっ!」」
そして、二人は満面の笑みを見せた。
案外、慣れればこの部室も居心地は悪くはない。先輩の元気な姿に、結城先輩と吉原先輩のアドバイスももらえる。何と言っても小説が読み放題。なんなら教室よりもいい場所だ。もともと学校があまり好きではない俺にとってはうってつけである。
これで、俺のラブコメも多少は良くなったのではなかろうか。
そう心の中で呟く、文芸部一年の相坂裕也だった。
「あ、そうだ新人君っ!」
「なんですか、吉原先輩?」
「五月のゴールデンウィークは開けといてね?」
「え、何かあるんですか?」
「うん、うちらの文芸部の文芸合宿あるから」
そして、同時に俺は入ったことを後悔しかけていた。
<あとがき>
皆さん、お久しぶりっす。
最近、僕の作品の評価が高くなってきてすごく嬉しさを噛み締めている歩直です。
まず、100フォロワー突破ありがとうございます! 次は200と意気込んでいますが、皆さんが飽きないような作品作りに徹していきたいのでこれからも応援よろしくお願いします。レビューもしていただければ僕としては新規読者も獲得できるので幸いです。
そして、この作品の表紙絵のラフを絵師さんから見せてもらいましたがかなりいい出来になっています。おっぱい大きめな先輩を拝める日もそう遠くはありません!
これからもよろしくお願いします。
銀髪系全裸女子高生歩直
PS:衛門になりました。うんこちゃん、すっごい面白いっすね。
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