第16話
——————☆
教室に戻ると退屈な授業が始まった。
今年から高校一年生の俺ではあるが、ちなみに一年の前期に習う分野は一通り終えているため別に難しいと思うことはない。
ただ、そんな俺でも苦手な分野がある……それは古文と世界史だ。
愚痴を言うのはさすがに恥ずかしいので一言だけ、ストレス発散として言わせてほしい。
「何だこのクソ教科は……」
とまあ、ただ苦手なだけなんだけど偉そうにしてすまない。俺は理系気質だから許してくれ。
それに、もしも今呟いた言葉が教壇で偉そうにしゃべっているジジイに聞こえようものなら俺の単位は剥奪されるだろうが、自分に嘘を付くのも良くはないわけで。俺は正々堂々と本音を言っているのだ。
断言する。
「苦手だし、嫌いだ」
「……おい、裕也」
すると、ちょうど隣にいる陽介が声のボリュームをかなり下げて名を呼んだ。
「なに?」
「さっきから、何言ってんだよ?」
きっとそうだろうなぁと思ってたので、
「言葉通り」
「……その言葉が聞こえなかった」
「俺が言うの?」
「ああ」
ぜひとも言ってくれと頷く陽介、その顔が近づけば近づくほどウザさが増して腹が立つが仕方ないので言った。
「……クソ教科だなって」
————しかし、思いもしなかっただろう。
俺が言ったと同時に
そう、思って、暗示て、そして祈った。
「おい、しゃべんな」
「「すみません」」
——その結果、俺たちが失ったのはこの授業の内申点だけだった。
「ただいま~~」
「おかえりぃ~~」
俺がダルそうに帰ってきた合図を誰もいない自宅に向かって呟くと隣で買い物袋を持っている先輩がニコニコと笑ってそう言った。
「なんで先輩が言うんですか?」
「え? だって、隣に住んでるんだしほぼ家みたいなものでしょっ?」
「は、はぁ……」
意味の分からない謎理論だが、笑顔が可愛いので許そうとしよう。
「それで、先輩はいつのまに俺の家に通うようになったんですか? まだ、学校始まって三日目ですよ?」
「え、あ、う~~ん……どうなんだろうね?」
「別に、先輩がいいのなら俺もいいんですけどね」
「じゃあ、いいじゃん!」
「でも、先輩は女性なんで考えた方がいいと思いますけどね」
「……」
俺がそう言うと、先輩はあっけにとられたかのように固まった。そして数秒後、後ろに一歩、さらに二歩下がっていく。
「っあ、相坂君って……もしかして……そ、そう言う気持ちが、あ、あるのっ!?」
肩を抱き寄せながら言い放つ先輩の表情と言えば、凄いモノだった。
でも、ここで俺までもがあっけにとられて動揺してしまえば形勢は逆転しずらい。この世の中、男が言うことがなかなか尊重されないことも多い。だからこそ、俺は無視を選ぶことにした。
「ありませんよ、はいはい、行きましょう」
「ちょっ——ちょっと!」
何の迷いもなく部屋に入っていくと、その瞬間。
目の前の景色が揺れた。
「え——」
すると、同時に三半規管が悲鳴を上げる。
「あ——」
先輩のいかにもやらかしてしまったような「あ」の声色を落ちていく景色の中で感じ取り、その一秒後何が起こったかを理解した瞬間には時すでに遅かった。
袖を強く引っ張った彼女に対して、一段登っていた俺は足を少し滑らせてしまったらしく、彼女に圧し掛かる状態で転んだのだった。
「いって、て……」
「うぅ、いったぁ……」
ぐわんぐわんと揺れる視界の中で何もできないのだが、目の前に薄っすらと見えたのは大きな突起物。
まあ、この突起物が分かれ目だったのかもしれないと後の俺はすぐに気づくのだが————この時の俺に言わせてみればそんなこと知る由もない。過去に戻れるのなら言ってやりたいものだ。
「ん……?」
「っ」
まるで電撃の如く脳に伝わったこの感触、むにゅり……いや、ふわり……はたまたふにゃりなのか……言葉にはできない弾力感と満足感、そして柔らかさを要する塊がそこにはあった。
「むにゅ……?」
「む、む――」
思わず口に出てしまう擬音。
「ふにゃ……?」
「ふ、ふにゃ……」
そして、火山は大きな噴煙をまき散らすことになった。
「————ふにゃ、ふにゃ、ふなやっじゃあ、ないでしょぉおおおおおお‼‼」
<あとがき>
こんばんわ、ふぁなおです。
そろそろセンター……じゃなくて共通テストですね。僕の通う大学もそろそろ階乗校になるので入れない状態になるので連休になるのですが非常に嬉しい限りですっ!
まあ、受験生の皆さんはしっかりと頑張ってください!
ちなみに、僕は最後のセンター試験で鉛筆削りを忘れて詰んでいたのを覚えています!!ww
よかったら、フォローといいね、星評価お願いします!
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