第15話「女の子だって気にするのですよ?」
————☆
「……う、そ……ぉ……あ、あい、相坂君が……お、お、女の子と、一緒に……いる?」
その席の裏側。
まさに相坂の死角となる位置に彼女……高倉椎奈は座っていた。
「ど、どうし、て……」
「ん、どうしたの? 椎奈?」
「——え?」
「いや、どこ見てるの、椎奈?」
「……っべ、別に! ど、どこも見てないよっ!」
「そ、そうか……ならいいんけど……」
や、やばい……結城君にバレてないかな? 私が相坂君の方見てること……も、もしかして先輩なのに後輩に手を出そうとしてるの!? ——なんてこと思われてたりっ……ど、どうしよう。
「……そう言えばさ、最近椎奈ってすっごく明るくなったよね」
すると、彼は目の前の目玉焼きハンバーグを綺麗に切って口に運びながら、「それはそれで良いんだけど」と後付けしながら言った。
「そ、そうかな……」
「なんかいいことあったのかい?」
「あったというか……なかったというか……その、どうかな……?」
「それはあった……って言うことでいい?」
「ま、まぁ……どっちもどっちっていうか」
「へぇ……でもね、前まであんなに暗くて陰キャラ全開だったはずの椎奈がここまで明るくなれる事って相当じゃないかな? うーーん、なんだろ、あ、そうだ、当ててみていい?」
私って、そんなに根暗だったのか。
なんかちょっとだけ、ショック……自分で分かってたとはいえ、悔しい。
にしてもこの人、なんで私の事こんなにも知ってるんだろう。
まあ、その頃から——入学当時から、一緒に居てくれた結城君は凄く優しい気がするし…………いやいや、もう本当に優しいと思う。彼は私と違って明るいし、コミュ力だってあるし、自分の事しっかりできて分かっててなんかこう……尊敬してる。
それに、友達の少ない私に構ってくれるし……。
「い、いいけど」
「よしっ! じゃあねっ〜〜」
米粒の付いた頬を見せながら思案する表情。
しっかりしてるけど、たまにこういう子供っぽいところがあるんだよね……ま、まあ、本当にかわいいんだけれどもね。
「……」
「……ん、どしたの」
「頬」
「え——あ、ああ、米粒……」
頬を拭ってペロッと口に運ぶ結城君。
そんな彼の行動にあっけにとられて静止してると、彼は続けて。
「ん……そうだ、それで何があったんだっけな~~」
そして、思考を再開する彼はまたもやニヤリと笑顔を差し向けて私の目の前で私を指さした。
「分かった!」
「……え」
「ラノベが売れた!」
彼は急にそう言った。
あまりの声の大きさにびっくりしたが、彼がいったことに気づき私は少し動揺する。
「っ!? ちょ、っちょま……い、言わないでよ!!」
周りの生徒も若干名こちらを見ているが、いったい何が起きたか分からないようで少し安心した。でも、こういうことは言わないでほしい。
「え、あ、あぁ……ごめん」
ちょっとしょんぼりする彼を見て、なんか申し訳なくなったがこれは学校には内緒のことだし。結城くんが悪いんだし、怒っていいんだよね?
「内緒だから言わないでよ……」
こんな……人だけれど仕方ないのか。
まあ————でも、これでみんなも分かった通り。
そうなんだ……私、高倉椎奈こと「夢見しずか」は小説「ラブコメを語りたい」というシリーズ累計100万部を突破した売れっ子作家なんです……。
「それに……」
「そ、それに……?」
「私の作品は——ラノベじゃありませんっ!」
「あ、あれ、そうだったっけ?」
「そうですよぉ……何回も言ってるじゃないですか」
「……い、言われてみればそうかもしれないね」
「ちゃんと聞いてくださいよ……もぅ」
もう一度言いましょう。
彼はとても優しくて、凄く尊敬していて、仲は深いです。
少なくとも私が一方的にそう思っているだけですが、きっと彼もそう思っているはずです。
それは、あの——相坂裕也君よりも。
あんなに熱い作品を書ける彼よりも。
同じ部活……まあ部員は私たちを含めて五人しかいない少数の文芸部ですけど、その中で部長を務める彼はもの凄く信頼しています。だから、私は彼にだけそのことを言ったんです。
まあでも、結局この様ですが。
「ははっ、すまんな! 俺も俺で忙しいからよぉ~~」
でも、ひとつだけ。
私から言えることがあります。
私の一個上の学年にいること、そして天才であること、そして何より、私に本当の年齢を教えてくれないこと。
なーーんて、幼馴染なんだけどね?
<あとがき>
謎の先輩登場!? と言ったところでこんちわ~~歩直です!
実は第四話の最後だけをちゃっかり編集したので、そちらも読んでいただけると嬉しいです!
いやあ、なんか僕の作品もっと見てほしいなって……承認欲求が凄いですね最近。いっつも読んでくださる人がいて、僕の他の作品を読んでくれる方もいて感動しっぱなしの毎日ですが、それでも僕なんかよりも凄い人たちがざらにいる世界。一方的にお世話になっている逢坂こひる先生とか結月アオバ先生とか、書籍化作家の先生方もまだまだ遠い。
もっと頑張りますね!
良かったらブクマ、星評価、ハートマークを押していただければ幸いです!
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