第14話「学食に響く秘密の会話」
「よっしゃ! 学食だぁぞぉぉーー!」
「おい……はしゃぐなよ、恥ずかしいなぁ……」
「なんだぁ……? 裕也お前、ここの学食は楽しみじゃないのかよ?」
「別にそう言うわけじゃないけどな、はしゃぐのはいかがなものかとな」
「それは私もさんせーい、田中君ってもしかして子供っぽい?」
「ああ、そうだよ早坂さん。覚えておいた方がいいぞぉ」
「おい、誰が子供だ? どこだぁ? ここにいるか~~??」
早坂と俺のいじりに対して、俺たち二人よりも背の高い陽介は手を額にくっ付けて探すジェスチャーをし始める。こいつ、別にそこまでじゃない、俺より1cm高いだけだろ……。
「田中君、そう言うの良くないと思うなぁ~~」
「同感だし、俺とお前じゃ対して差はない」
「負け惜しみを……。まったく、1cmの重みは岩よりも重いって教わらなかったかぁ?」
「そんなの教わってないし」
「負け惜しみじゃないわよっ」
「ははっ! 全くこれだからチビ共は!」
陽介の高笑いはほっておいて俺たちはカウンターに並ぶとしようか。こんな奴のバカげたおふざけ話に付き合っていたら俺がラブコメ出来合くなってしまいそうだ。特に、こいつだけと仲いいのは不服だが、こいつと一緒に居すぎるのも俺の性格までもが勘違いされそうだ。
「じゃあならぼっ」
「は、はい……」
とまあ、ここまで高性能なステルスをしてきたのはこの陰気な女子生徒。早坂がついさっき誘った少女でまさしくも先輩のコミュ障verの時の様な匂いを感じさせる。顔は少しだけ赤くなってはいるものの、誘った本人、早坂には心を許しているらしい。その表情筋の緩さからそれが見て伝わってくる。ちなみに、陽介の台詞にはかなり引いているが。
「今日のメニューは……ほう、200円定食か、これは優しいな」
「お、ビビンバあるじゃん!」
「うわぁ~~、いちごショートケーキあるっ!? なにこれ食べたいっ——けどお金ないんだよねぇ、私……」
「……」
こちらを向いて上目遣いをする早坂、俺は払わないぞ。まあ、先輩なら考えるけど。
「あいさk——」
「俺は無理だよ」
「即答!?」
「顔に書いてあるからな」
「え、まじで? 私の顔そんなに汚い!?」
またまた御冗談を……なんでこの女子はラノベの天然気質持ちちゃんのようにありがちな勘違いをするんだ。ラブコメヒロインとしての質は高いが……ってもしかして、早坂さんってもしかしてその枠だったり!?
「ねえ、ねえ?」
「えっ? あ、うん?」
「どうしたの? ぼーっとしてるけど……」
「あ、いや別に何でもないよ」
「そ、そう……私の顔が汚すぎて引いているのかと……」
そうか、こいつ本気だな。
「その通りだ」
「え?」
「……ひどい」
すると、彼女の驚いた……というかショックを受けた表情から隣の小泉さんまでもが声をあげた。
「おい、裕也」
「な、なんだよ?」
「やり過ぎだぞ」
「……冗談だよ」
こいつにだけは言われたくない。世にはそんな人間が良くいるだろうが、俺は、相坂裕也はこんなどうでもいい話の流れでそれをされてしまったのだ。
とまあ、茶番はこれまでにして。
ここで一変、というか一遍。俺たちの紹介をしておこうか。
「それでねっ、あのゲームのこの物語が泣けて泣けてっ! もう涙腺崩壊何の苑だよね!」
まず一人目、早坂優菜。
俺の真正面に座り、200円定食の味噌汁のお椀を手に持ちながら隣の小泉さんに話しかける「THE女子高生」。
コミュ力が高く、クラスの女子の中では良く話すほうで友達を即座に作れる能力があるらしい。
昨日初めて話をしたときは陽介のコミュ力が高いだけだと思っていたがこっちも中々なのだ。
紅蓮色に輝いた瞳に反射するみそ汁の豆腐が俺の目に入るくらいには綺麗で、肩辺りまで垂れた漆黒色の髪、少し長めなまつ毛がポイントの高さを物語っている今を時めくJK様だ。
「わ、わかります! 私はあのヒロインに共感しちゃって!」
そして、その隣に座った二人目、小泉六花。
某アニメのように中二病でないのだが割と性格は似ている気がする。
少し控えがちだがオタクの女子高生だ。三人称視点で彼女をチラッと見てはいるだけさが彼女はコミュ障だろう。話すのも苦手で、どうやら人の目を見ることはできなりらしい。かなり重症だ。
俺の読んできたラブコメ小説の中でもここまで気になる陰キャラ系女子は他にはいないほどに、どこかに魅力を感じる。
それは赤毛の長髪なのか、黒淵メガネなのかは知る由もないがな。
ってな感じだ、あと男は別にいいだろうから言わないが、一言だけ。
いつも通りの俺たちだ。
とにかく、当面はこの二人が俺たちと今後、学校生活を共にする女子たちだ。皆もよろしく。ちなみにヒロイン候補2と3だよん!
————☆
「……う、そ……ぉ……あ、あい、相坂君が……お、お、女の子と、一緒に……いる?」
その席の裏側、まさに相坂の死角となる位置に、彼女、高倉椎奈は座っていた。
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