第12話「寝取り?」
「あ」
「んみゃ…………えっ?」
その瞬間、先輩は目を覚ました。開かれる瞼からは硝子玉のように光る薄桃色の瞳が震えながらこちらを見つめ、別に裸でもないのに乱れた高校のジャージから男の俺だけが分かる色気を醸し出していた。
「あっ、ああ、相坂君がなんでここに!?」
「っえ、その……ここっ、うちなんですけど!」
「んな、そんなわけないでしょ! 私のうちに無断で上がって、その、えっと……いくら相坂君でもゆ、許さないんだからね!」
「でもここはうちなんでっ!」
「そ、そんなわけないよ! 私だって昨日はご飯一杯食べて……お風呂に入って……すぐに眠くなって、寝たんだし……あっ! まさか相坂君っ、わ、私のお風呂を覗きに——!?」
「そんなわけないじゃないですか! ここは俺の家ですっ、先輩!」
まさか、先輩は俺の方だけを見て断言していたがここはどこからどう見ても俺の家だった。
それに、確かに先輩は「寝ましょうか?」と聞く前に俺の家のお風呂に入ってはいたが断じてそんなことはしていない! まあ実際俺の家でお風呂に入っていたので見ようと思えば見れるのだが…………生憎と俺の思い描くラブコメにはそんな破廉恥なシーンはないのだ。
「ま、まさかぁ……」
自信なさげに呟く彼女、どうやら俺の声色で察したらしく周りの景色を見渡し始めた。
「ど……どうですか?」
すると、先輩は。
「…………ほんとでした……ごめんなさいっ!」
またもや、いつかしかで見たあの土下座を今度はゆっくりと俺に向ける。さすがにそのみっともない姿勢は見ていて罪悪感しかわかないのでやめてくださいと言うと彼女はすんなりと元に戻った。
「ごめんなさい……」
「いや、大丈夫ですよ」
「私……まさか、相坂君の家で寝るなんて……」
「大丈夫ですって、それにそれを促した俺も悪いですし」
そう、昨日俺は先輩にこう提案した。
お腹を大きく膨らませてため息をしている先輩を見て、どうも家に帰すのは可哀想だなと思い(まあ家は隣なんだが、下心はないつもりでいたがもしかしたら純粋にそんなことを感じていたのかもしれない)。
『先輩……その、苦しいならうちに泊まっていってもいいですよ?』
『えっ? そ、そんな事させるのは悪いよぉ……』
『大丈夫ですっ、お風呂だって貸しますしそれに来客用の布団だってあるので』
『そ、そうなの?』
『はいっ! 僕は構いませんよ?』
『じゃ、じゃあそうしようかな』
と先輩を口車に乗せていた。
確かに夜のテンションでおかしくなっていたのかもしれないがさすがにこれは迂闊だった。いくら先輩と言えど、彼女は俺よりも身長も低いような可愛い女子だ。ましてやうちの高校の先輩だし……いろいろと危ういところが多い気がする。
「それを言うなら、私だって頷いたわけで……」
「でも……」
俺は俯いてから、先輩を顔を覗く。
「あっ……でもほんとに、覗いてないわよね?」
「っな! さっきも言ったじゃないですか、そんなことは断じてしてません! 神様に誓って絶対にしてませんよって!」
「……でも、ラノベ書いてるし……男の子ってそう言う感じの好きじゃん?」
「っぐ……そ、それはそうですけど」
さっきの言葉を訂正しよう。
やっぱり、ラブコメに色気展開は必要だ。そんな腐った下心が俺にはあったと思う。ごめんなさい、腹を切ってお詫びします。
やっぱ怖いのでそれはしません。
「やっぱり!」
「ぐぅ……ぐうの音も出ません」
「出てるじゃん!」
茶番話としても冷静に考えてみて、それはさすがにひどい。自分のファンでもあり、ラノベが好きな仲間でもあり、こっちで初めてできた友達……そんな一つ上の綺麗な先輩に対してよこしまな思いを抱くのはやっぱりだめだろう。
まあしかし、俺だって健全な男子だし……その彼女とか、欲しいし? ちょっとくらいは良いのではないかと最高評議会に申し立てまつりたいと思いますがね!
「あ、先輩」
「ど、どうかしたの?」
そこで、俺はふと上に視線をずらした。
「時間がヤバいです」
「え……まさかそんな…………っ!?」
時計に刻まれていたのは『8:00』というデジタルな数字だった。
<あとがき>
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