第11話「昨日の先輩とまさか」 その二
と言うわけで俺はまず、レシピの詮索から
え、なに? なんで決めてなかったのかって?
まあ、その理由はあるが……それはあとで述べようか。
……と言うわけで、もう一度気を取り直して————レシピの詮索から始まった。まず、初めに俺が見たのはかの有名なあのサイト「クックパ〇〇」だ。かなりの料理の作り方が載ってはいるが、所々にあまさがありハズレの料理も多いというがまあ、俺の様な男にはお似合いなサイトである。
十数秒ほどスクロールをし続けるといかにも美味しそうな鮭のムニエルが載ってあった。これ……にしたいところだったが生憎、うちには鮭が置いていない。
仕方ないと今度は他のサイトを覗いてみる……だが、残念ながらピンとくるものが無く途方に迷った俺は苦渋の末、YourTubeを開いてみた。さっきのサイトとは違ってこのYourTubeの場合、出している方はそれで生計を立てているのであまり下手な料理をすることが出来ない、そのためここに載っている料理は大抵美味しいことが多い。
そして数秒後、俺の親指は止まった。
見つけたのは「豚肉とキムチのごま油和え、チーズをのせて……」。
まるでWEB小説の様なタイトルの長さに作家(仮)としては心を打たれてしまった。さらには冷蔵庫を開けると……まるで運命と言わんばかりに豚肩切り身、市販のキムチ、そしてチーズ。引き出しを開けると、こちらに来てから未だ一ミリも使っていないごま油が満タンで置かれていた。
「……まあ、だよな」
そして三十分後。
「よしっ……できた!」
ごま油の香ばしい香りに豚肉がキムチと重なってピリ辛に仕上がった一品。所々が赤く染まっている溶けたチーズがさらに美味しさを引き立たせていた。まさに質素な食材たちがカーニバルのように踊っているようだった。
そして俺は、できた料理を皿に移してからそれを持って居間へ向かった。
零れ落ちないようにゆっくりと歩みを重ねると先輩はまだパソコンと睨めっこをしていたようだった。さすがにさっきみたいに驚かすのは危ないため、その隣にゆっくりと皿を置くと。
「……っあ! できたの!?」
「ええ、できましたよ」
「うわ~~美味しそっ!」
「もちろんですねっ、しっかりレシピ見て作ってますし、美味しいに決まってます」
「え、そ、そうなの?」
「はい、そうですけど」
「なんだ……ぁ、……レシピ、見てるんだね……」
「ちょっと、なんで急にテンション低くなるんですか?」
「……え、だって……他人の模造品だし……」
「なんですかその言い方は……これでも頑張って作ったんですよ?」
「そ、そうだけど……あの相坂君が模造品を作っているとなると、ね?」
「先輩、小説と料理を一緒にしないでください。これはあくまでも料理なんで。俺なんかに美味しい料理ができるわけないじゃないですか、作れるとしても野菜炒めと炒飯くらいですよ」
「いやいや、作れるじゃん!」
「この二品はいくらなんでも、先輩でもつくれますけど」
「そんなわけないし……私、できないし……!」
「なわけ……先輩みたいな綺麗で大人っぽい感じの女性が作れないわけないですよ」
「え……き、きれ……ぃ……?」
すると、先輩の頬が少しだけ赤くなっていた。
なんでだろうと考えると、実に一秒前。
俺は先輩を褒めていたようだった。
「——あ、いや、今のなし」
「っえぇ~~!?」
「なしなし、やっぱなしっ!」
「そ、そんなぁ……お、大人ぽいって、綺麗ってぇ……言ってくr……」
「いやいや、そんなことは言ってませんっ! ……あと、文句を言うなら食べずに帰ってくださいっ!」
「っ! そ、そそ、そんなことないよ? やっぱおいしそうだし食べる!」
「よろしい」
なんだ、この先輩もしかしたらすごくちょろいぞ?
まあそっか当たり前か……さすがは俺の作った料理……そう簡単には離せるものじゃないだろうなぁ!
「相坂君?」
いやいや俺が作ったんだからこのくらい当然? いやいや俺のファンなんだししっかり手名付けないと駄目なんだし、このくらい余裕!
「あーいーさーかーくん?」
「え?」
「何か、考えてた?」
「じゃあ食べますかっ~~」
「なんで無視!?」
「先輩、俺全部食べちゃいますよ?」
「んな! 待て待て、私も食べる!」
~~~~~~~~
てなわけで、満腹になったお腹を抱えているうちに俺と先輩はこの居間にてねむってしまったらしい。
だが、さすがにこれはヤバい。
ヤバい、ヤバい……さすがにヤバい。
これは一線を超えてしまっている。どうしよう、このまま起きてしまったら先輩は叫び出して俺のことを警察に……!
すると、先輩はゆっくりと起き上がった。
「あ」
「んみゃ…………えっ?」
<あとがき>
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