第11話「昨日の先輩と……まさか」
「……なっ、え、何が……あった……!?」
翌日、起きてから実に二秒、俺の人生は大きな壁とやらにぶつかっていた。
では、それはなぜか……今から十時間ほど遡る。
~~~~~~~~~~
スマホを見ると、時間は「19:24」。そろそろご飯を作る時間なのだが、先輩はまだ俺の家で俺の小説を読んでいた。
「あの、先輩」
「…………」
さっきから五回ほど声を掛けているがどうやらそれは届いていないらしく、先輩の視線はずっとパソコンに向いていた。
あれから実に二時間近く経っているが、俺の小説はそこまで長くはない————というより、むしろ短い。先月の下旬か始めたこの小説家(仮)稼業。その日の浅さから文字数も比例するように少なかった。
先輩が読んでいるはずの小説は俺の中で二作目。
まあそれは、あの駄作で終わった短編二次創作小説を含めるならの話であるため実質一作目と言ってもいい。というわけで、その一作目の文字数はこの時点で「約36000字」。さらに下書きを含めると「約41000字」ほどのため小説オタクならばものの四十分程度で読めるはずだ。
しかし、小説オタクこと高倉椎奈先輩は未だ必死にスクロールを動かしつつ、画面に鋭い眼光を向けていた。
普段(と言っていいか分からないが今のところの二日間)から見せていなかったかなり真面目な表情を見ると妙に感じるが、俺の小説はかなり分かりやすく、中学生、もしくは小学高学年が読んでもすぐに頭に入るようにしている(つもり)ため先輩がこんなに時間がかかるとは思えない。
まさか……あの駄作を?
って、今更あんな小説を読まれたくらいで心に突き刺さる俺じゃないからいいか。
いやでも、そろそろご飯作りたいしどうにか気付いてもらわないと……。
俺は数十秒考えたが結局、苦肉の策で先輩の肩をゆっくりと叩いた。
「先輩っ」
「っひゃ——⁉」
すると、肩に置いた俺の手が宙に舞うほど先輩は震えた。それを震えたと呼べるかは分からないがこの際いやらしい表現をするわけにはいかないため、そう言うことにしておこう。
「っ!?」
その震えに乗じて先輩の藍色の髪も宙に舞う。俺の鼻腔を撫でる華やかなシャンプーの香りに虜になりそうだったが何とか意識をとり戻す。
「び、びっくりしたぁ……」
俺自身も予想だにしない反応で多少驚いたが、そんな俺の反応など見ず知れず先輩は肩を両手で抱えながらこちらを向いて安堵していた。
「そ、それはこっちの台詞ですよ。そこまで震えなくても……」
「い、いやぁ……結構びっくりしたんだもん」
「そうなんですか?」
「だって……集中してたし……」
「ああ、確かに……」
思い出せば確かに彼女の表情は鋭かった。にしても自分の書いた小説そこまでの見込めるのかな? ちょっと疑問だ。
「じゃあなんでしたのよぉ……?」
「……先輩、俺はさっきから呼んでましたけど。先輩のことを」
「えっ、そうなの?」
「そうですよ、ずっと無視されてましたしっ」
「そ、それはごめんね……えっと、その……もしかして悪いことしちゃってた……?」
先輩の顔が少し悲しそうな犬のようになっていた。いやしかし……さすがに、女子にその顔をされると俺も弱い。いくらラブコメヒロインで鍛えてきた俺でもリアルの表情には勝てん。それに俺も俺で肩まで触れなくても良かったのかもしれないな、そこは少し自重しよう。
「いやそんなことはないですけど、まあ気づいては欲しかったです」
「ご、ごめん……」
「そんな気にしないでください。俺も俺で触らなくても良かったかもしれないんで」
「……そんなことぉ…………ないけれど…………」
「え?」
「あっ、いや別に……」
「はぁ…………あ、先輩」
なんか言ったような気がするが、まあいいか。
「な、なに?」
「俺、お腹すいたんでご飯作ってもいいですか?」
「それは大丈夫だけど、もしかして……私って邪魔かな?」
「そんなことないですよ、全然大丈夫ですっ」
「ほ、本当に?」
「ええ、それともご飯も作りましょうか?」
「え、ほんとにっ⁉」
なんで急にテンション上がったんだよ。
「まあそんなうまくは作れないですけど、それでもいいなら」
「食べる! 全然食べる!」
「本当に簡単なのですけど、いいですか?」
「うんっ! 何でも食べるよ全然っ——タイヤ出されても食べるもんっ!」
「俺はそんな鬼畜じゃないです」
「えへへ……でも、ちゃんと食べるから大丈夫です!」
しかし、さっきは帰ろうとしていた先輩が手料理をふるまおうとした途端急に乗り気になるなんて。まったく、ラノベを参考にしていてよかったぜ。
料理が作れる男はモテるらしいからな……まあ別に、先輩はただのファンなんだけど。まあファンの胃袋捕まえられたらもう勝ちみたいなもんだし、それもそれでいいか。
<あとがき>
ふぉろー、いいね、星評価絶対にお願いしますっ!
どうにかしてランキングに載りたいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます