第10話「しつこい友達、照れる先輩」 その二
その後はとにかく状況処理がしんどかったのを覚えている。陽介の質問攻めに困る先輩、それを見て動揺しつつなんとかやり過ごすのもかなり大変だった。
陽介の問いに片言で声量も小さく、一向に答えない彼女。そしてこの関係をバレないようどう切り抜けるのかの模索。結果としては何とかなったが、もしも家が隣で小説の事がバレてしまったら終わるし、本当に気を付けないと。
「……それで」
「?」
「なんで先輩がうちに来てるんですか?」
「……ぇっ、いや……まぁ……ねっ?」
何が「まあね?」なのか全く分からないが、顔色から察するにいつもの先輩に戻ってきたらしい。
「まあねってなんですか……」
「その……ちょっと、安心したっていうか……」
「安心ですか?」
「う、うん……ちょっとあの人怖かったから……」
それには賛同だ。実際、先輩がコミュ障だったとは知らなかったがそれを差し引いてもあの勢いは怖い。いくら俺とて怖いし、これ以上はやめさせないと。
「それはすみません、まあ……あんなのでも悪い奴じゃないんですよ、気にしないでください」
「わかった……」
「じゃあソファーで座っててください、今お茶入れるんで」
「え、別に——」
「良いんですよ、せっかく来てくれたんですからこれくらいしてあげないと」
「でも迷惑そうな顔してたし」
「え、してましたか?」
「してたよっ! さっき!」
「ああ……なんかすいませんっ、ついつい本音が——」
「ほ、本音なの!?」
「冗談ですよ、先輩?」
「っな! だ、騙したの、ね?」
「からかいようがあったのでね、じゃ」
そう言い残して俺は台所へ向かった。適当にポットに水を突っ込んで温める。来客用のコップに茶葉を少しだけ放り込み、その上から沸騰したお湯を流し込む。
このつまらんいつもの流れにはもう慣れたが、相変わらず虚無だとは思うなぁ。
とまあ、俺はそれを冷ますために台所をうろついた。横目ではソファーに座る先輩の後ろ姿が薄っすらと見えていて、不思議とため息が漏れてしまった。
そう、あれが原因だ。
あの一瞬のアレが。
いやいや別に確証なんてない、だが……陽介が話しかけに言った瞬間に先輩が手から離した一冊の本。
その表紙に書いてある名前がちらっと見えた気がする。
「まさか……な」
まあ、考えても仕方ない。きっと気のせいだろう。
俺が居間にお茶をもって向かうと、先輩は俺の使っているパソコンを開いていた。
「お茶ですよ、熱いので気を付けてください」
「あ、どうも」
「何を見てたんですか?」
「い、いや、小説を見せてもらおうかなって思って……サイトを……」
「ああ、別にいいですよ。いっつも読んでくれてるんでこのくらいは俺も」
「——ほんとに!?」
途端に目の色を変える彼女、獲物がすぐそこに居るライオンみたいな表情をする。
「はい、どうぞ」
「いいの?」
「はい、大丈夫ですよ」
「よ、よかったぁ……またバレるかt——!?」
「……」
「そ、それはちょっと、あの、ね? 別に深い意味なんてなくて……え、っと」
「はぁ…………いいですよ、もう慣れたんで」
「な、慣れた?」
「今更、その正直さにですよ」
「わ、私ってそんなに正直かな?」
「自覚ないんですか? それはそれはもう、高らかに宣言できるほどには正直ですよ。良いか悪いかはさておいて不安になるくらいには正直ですっ。まだあってから三日しか経ってないのにすごいですよ、これは」
「そんなに……」
「別に落ち込むこともないですよ、世の中にはたくさん嘘つきがいるんで。このくらい可愛いものですし、むしろ良いことしてるかもって言うか」
「ほんとに?」
今のソファーに座りつつ、その後ろで立っている俺の顔を覗く彼女。
しかし、こうやって見ると改めて思うが可愛いな。会ったときはこう、ハイテンションだったっていうか、まあ本質は変わっていないようだけど。
「そうですっ」
ニコッと彼女は微笑んだ。
「で……聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
「なに?」
「先輩は暗にコミュ障ったんですね」
その瞬間、まるで漫画のような噴き出すしぐさが見えた。
「っげ、ゲホッ、ゲホッゲホッ!」
「ちょ、先輩!」
「っぐ……な、なんでそれを……バレないようにしてたのに……」
「あれで隠してたんですか? あいつにビビりまくってたでしょ先輩は?」
「隠してたつもりよ……くぅ……あ、相坂君にはそうは思われなかったのにっ……」
「なんで俺にはなんですか?」
「だ、だって……せっかく会えた作者にあき、あき……あ、飽きられたくはっ——なかったし」
飽きられたくはなかった、と。
この人、散々俺の情報だけ得てあれこれやっていたというのにまさかそんなことを気にしてたなんて、一体どこまで馬鹿なんだ。あんた特定したって言ってなかったっけ?
「先輩、まじですか?」
「まじ……」
——ですよね。
やっぱりこの人はあれだ、あれ。
ものすっごくおかしな人だわ、これ。
「っふ、ふふ、はははっ!」
「な、なに、笑ってるの?」
「い、いえっ……ちょっとっっくく……面白かった、だけですよっ」
「も、もう笑って——っ///」
俺が笑えば笑うほどに頬が赤くなっていく彼女、しかしその表情は下校の時の不安を醸し出すような変に引きつったものではなく、少しだけ嬉しそうに口角をあげていて、実におかしな表情だった。
「じゃ先輩っ、読みます?」
「……ぅ、よ、よむ」
<あとがき>
皆さま、新年あけましておめでとうございます。
もう2021年になりましたね、時の流れが早すぎて正直あまり受け入れることが出来てないくらいです。まだ大学入学したてって気がしてますし……(笑)
そう言えば僕が初めて小説を書き始めたのが2018年の冬ということで、それからは実に2年以上たつのですが僕の小説って上達してるんですかね? まあ2019年は大学受験の勉強期間と言うこともありましてほとんど小説を書けてませんでしたし、実質小説家(仮)歴一年としてはちょっと謎なところもあります。
そんな僕がふと思い立ったのですが、皆さんって普段はWEB小説を読んでいるのでしょうか? 僕はWEBの方はあんまり読んだことなくて、カクヨムでは慎重勇者くらいしか読んだことがありません。カクヨム書籍化だと「継母の連れ子が元カノだった」とか「ひげを剃る。そして女子高生を拾う」とかは全巻買っているので多少は読んでいることになりますがオリジナルはあまりないです。
そんなこんなで2020年で読んだラノベの数を計算してみたところ50冊くらいで、それに使った金額も4万円弱くらい……ラノベオタクとしては少ないかもしれませんが、学生としてはかなりお金を消費しててビビっちゃいました。僕の場合、月2万円は貯金に回そうと思っているのですがこれじゃあちょっと破綻している感じがします(笑)
いやしかし、アニメオタクでもあるが故に今月も冬コミの代わりのエアコミケで7000円使ってしまったので食費浮かすしかないですし……オタクって辛いっすね。まあ、のんのんびよりのれんちょんのTシャツと妹さえのカニ公Tシャツ買えたので満足ですが……。でも、お金欲しいんで……ほんと、皆さん僕の小説をたくさん読んでください! たくさん読んでいただいてるので感謝ですが、目標は月1000円ほどの広告収入がもらえることにしているので!
10月の時点でひと月107円だったので、まだまだです……泣
良ければ僕自身をフォロー、そしてこの小説の星評価お願いします! ランキング1位目指しているので!!
新年も皆さんと、そして僕に栄光あれ!
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