第一章「家が隣ってま? 先輩それはないですよ」

第5話 「隣人っ————?」その一


 帰路に着いて二十分。


 俺たちはかなりの時間を互いに話してして過ごしていた。内容と言えば、アニメの話や一般文芸小説の話、ライトノベルは何が面白いかとか、WEB小説なら何が良かったとか——そんな感じの話を繰り返して歩を進める。


 一番盛り上がったのは「とらドラ!」の話だった。目つきが悪い主人公の竜司が変な異名を持つ女子高生逢坂大河に出会うところから始まる青春群像劇、つまりラブコメだ————ってネタバレをするのはここまでにしようか……。


 しかし、光栄なことに——俺は彼女と相性がいいのかもしれない。勿論別途的な意味でとかは男としてしてみたいけど——いやごめん、うそだ。なんでもないわすれてくれ一切合切この世で一生に忘れてくれ。


 それにしても話していて楽しいと思う。彼女の会話術か、それとも運命的な何かがあるのかは分からないが、先輩地震に惹きつけられる様で不思議、さらには幸せでたまらない。しかし、そんな時間はずっとは続かない。左手につけたG

GATTACKの時計を見ると、時間は「18:30」。要するに校門を出てから約二十五分は経っていた。


 ただ、そんな自分の予想を先輩は軽く追いこしてくる。


 なぜなら、先輩が一切俺と離れないからだ。別に変な意味でもない。ボディタッチしてはなれないとか——そういう羨ましいやつだな氏ね! 的なことじゃない。


 ————帰り道がずっと被り続けているのだ。


 不思議と怖さは感じなかったが相手は先輩だ。さっきまで学校で口を滑らせて特定とか嘘だとか言っていたくらいなんだ。変な気を起こしていても何らおかしくはないだろう。


「ねえ、あのさ」


 そこで俺は訊いてみることにした。

 なかなかどうして、さすが天才だな俺。


「ん、どうしたの?」


「いやぁ、さ。その、高倉先輩も家こっちなんですか?」


「————そうだけど、ど、どどうして?」


 どうやらその意図を分かっていない様子だった。


「深い意味はないですけど、ずっと一緒の道通ってるなぁ——って思って、その一応と言うことで」


「ああ~~、確かに言われてみればそうかもしれない」


「いや、言われなくても三十分経ってるんでけっこうですよ」


「え、うそ……そんなに?」


「はい、時計」


 GATTACKの時計を見せると先輩は口を開けて頬けた。


「どうすか?」


「ほんとだね」


「え、それだけ?」


「うん、でも私の家もこっちだし……ぃ」


「まあ、それなら仕方ないですね……」





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