第2話 「爆ぜろシナプス」


 な、なに——先輩が俺の小説のファン……だと!?


 安直にして愚鈍、明確にして不名誉。


 からかっているのか? 


 いやいやまさか、そんなわけがない。


 今、目の前にいる……ヒロイン、じゃなくていかにも清楚そうな高倉椎奈先輩がそんなことをするようには見えない。


 知的な顔、そして妖艶な美貌、さらには男子を仕留める笑顔。見れば見るほどそんなはずがない。そんなわけがないのだ。


「え、いや……え?」


 しかし、まともに声すらも出ない。

 

 ――っふ、ふふっ、俺としたことが物凄い動揺してやがる。この胸の高鳴りとともに込み上げてくる羞恥心はいったい何なのか、そんなどうでもいいことが気になってしまうくらいには、俺の心はおかしくなっていく。


 ああ、ちょっとショックなのかな俺は——まさか告白だと————っていいじゃん、期待しても!! さっきは否定したけど俺だって恋したいんだよっこのクソビッチ読者めが!!


「あの……えっと、もしかして、違いましたか?」


 いやいや、それを問いたいのは俺だ。


 先輩のような、地味そうに見えるが細部はかなり可愛い女の子……ましては女子高生に俺の自己満小説が読まれるわけがないと思う。


 いやむしろ、その確率の方が低い。


 やたらと感想やコメントを送ってくれる方がお一人居られるのだが……まさかそれが——目の前にいる彼女であるわけがない。


「え、まあ……相坂は僕ですけど」


 そして、動揺が心を支配する。

 しかし、彼女はそんな僕の心の内などを気にしてはいなかった。


「——あ、やっぱり!」


「……え、でも……僕って、一年生ですけど……なんで……?」


 俺は率直に疑問を口にする。


「——っ!」


「あの、どうかしましたか?」


「ちょっ——えっとね、そのぉ……それはちょっと、言えないというか、なんというか……」


 頬を赤らめてもじもじとする彼女。どうやら動揺しているようだ。


 何か隠したい事でもあるのだろうか? 


 だが、さすがに初対面で隠したいことまで聞いて、内側まで踏み込むのは違うだろうと思う。そう思えるくらいには常識人である俺はそれ以上、尋ねなかった。


「——ま、まあ、言いたくないのなら全然言わなくても大丈夫ですよっ! 僕のことは気にせずにっ!」


「あ、はい……助かり、ますっ……」


 自信なさげに俯いた彼女を見て、再び思う。


 そんなわけ……いやいやまさか彼女が本当に俺の小説を読んでいるわけはないと。別に自虐でもないが、ブクマが一件のWEB小説を読んでくれているなんて……そのブクマ一人目になってくれているなんて都合がいいことが起こるはずもない。


 そうやって、俺は否定しかできなかった。


「————あの、でも……相坂さんの小説はほんとに面白いですよ! 私、毎日見てて! ずっと更新してくれるのが楽しみですっごく嬉しいんですよ!」


 しかし、そこまで言われると嘘でも照れてしまって顔も熱くなる。


 だが、この笑顔。


 その理由は一つではなかった。


 朝はバスでチラッと見えた真顔しか知らなかったが笑うと凄く可愛く見えた。


「そ、それはどうも……っ」


「あ、あのっ、よっよければこの後、一緒に帰っちゃだめ……ですかね……?」


 少しだけ屈んで彼女は言った。


 前のめりの態勢で上目遣いを使って俺の視線に瞳を重ねる。無意識なのかそれとも狙っているのかは定かではなかったがもの凄く可愛いのは言わずもがなだった。


「ま、まぁ……高倉先輩がよければ……」


 願ったり叶ったり、むしろご褒美なくらいに最高な返事をした高倉先輩の赤い唇に視線を吸い込まれていた俺は、いつの間にか先輩と二人だけで帰路に着いていた。






 —————てか、僕ですら入学式で女子と帰ったことなんてないんですけど!? まじで爆ぜろ、弾けろ、滅亡しろおおおおお‼‼‼‼‼‼




 <あとがき>

 皆さんこんばんは、主人公に嫉妬しているふぁなおです。


 こんな僕の嫉妬に共感された方はぜひ、フォロー、評価、いいね、コメントどれか一つでもお願いします!!

 

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