第1話 「それは愛の告白?」
夢でも見ているような気分だった。
——それはなぜか?
——その理由が、皆には分かるだろうか?
結論から言うと——俺ですら分からなかった。
もしも、今日という日に……それがあるとするならばおかしいからだ。
だって、今日は入学式なんだぞ?
普通に考えて、告白なんていう一世一代に等しいイベントが今日という日にあるはずがない。
たとえ、それがあったとしても、俺が思うにそんなシチュエーションは軽々しすぎて告白とも言えない。俺の、俺だけの理想ラブコメであるとは言い難いのだ。
だからこそ、もう一度、結論を言おう。
——俺ですら、意味がわからない。
「ん……」
彼女は喉を鳴らした。
色気を含んだ高音ボイス。少しだけ落ち着いているがどこか陽気な雰囲気を感じる声だった。
そして、目の前にいる少女……いや、少女とは言い難い。俺よりは背が低いとはいえ、セーラー服の線が赤色だし上級生で間違いない。
彼女は少しだけ頬を赤く染めて、こちらを見つめる。表情が豊かになっているのを除いて、その恰好にその容姿はよく覚えている。
彼女はあの女子生徒だった。
今朝、俺を追い越したバスの5列シートに座っていた同じの高校の女子生徒だ。
しかし、だからこそ。
彼女の前に俺が立っている理由がより一層分からなかった。
彼女とは初めて出会うし、何の接点もない。そんな彼女が、俺にこk————いやいやまさか、信じ難いことこの上ない。
そんなことで勘違いする俺ではない。
「————っあの!」
すると、静寂が切り裂かれた。
少し高めの震えた声で叫んだ彼女に少し驚いて俺はビクッとしてしまう。
「——は、はいっ」
俺が応えると彼女は唾を飲んだ。
体育館裏、無人のアーチェーリー部練習場に音は響いて広がっていく。
「……」
黙り込む彼女、そして緊張する俺。
「……」
正直、この緊張に心がどうにかなりそうだった。
待たされるということがここまで苦痛なことだとは思わなかった。極限状態に近いストレスを今、俺は感じている。
無言が続く。
そして、俺も彼女も一言すら発さない。
これではらちが明かない、ここは主人公の行動をしめs——
「——あの、あ、あい、相坂君に言いたいことがあるんですっ‼‼」
口を開こうとした刹那、彼女がもう一度口を開いた。
「な、なんでしょうか——その、ぼく……」
「あ、えっと、私の名前まだでしたっ! 私は高倉椎奈って言いますっ、高い倉に椎茸の椎、奈良の奈と書いて高倉椎奈です。そ、その私は、二年生ですが、今日、君にどうしても言いたいことがあって——」
「は、はぁ……?」
疑念の目を向けるが——しかし、なんということか、もじもじする先輩の姿が何とも可愛らしく、小動物の様だった。
「えっと、そのっ!」
「はいっ——!」
思わず返事をすると、彼女はついにそれを言葉に変え、僕に言い放った。
「私っ、き、きみのっ——」
まさか。
「きみの、あい、あいしゃか——ん!」
まs——いや、可愛いな今のは……。
「じゃ、じゃなくて、あいさかくんの——あい、相坂——」
今度の今度こそ、そのまさかが来るのかっ!?
そして、まるで告白でもするかのように彼女は頭を下げて言い放った。
「——相坂君の小説っの、大ファンなんです——っ‼‼‼」
「え」
「え——」
「ええ?」
しかし、その結果として彼女から放たれた一言は俺の予想を軽く超えていたものだった。
〈あとがき〉
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