第2話
魔王城を出て、三人で王国に帰る道。
魔王を倒したとはいえ、
(戦いが終わった後に…回復魔法なんていらねーのに)
みんなも知っていると思うが、泣くのってエネルギーを使うんだ。
二人に抱きしめられて、泣いたことで最後の体力の一滴まで流し切ってしまった俺は二人に支えながら気絶してしまったらしい。気づいたら二人は回復を俺に施したようだ。
口が悪いところはあるが、二人は心優しい最高の仲間だ。
そんな二人を傷つようとする魔物が来れば、俺は命をかけてこの右腕一本でも倒すと殺気を出していた。それが利いたのか、魔王が死んだせいなのかわからないが、魔物と一匹も会うことがなく、障気が薄いところまでたどり着けた。
三人で顔を見合わせながら、一息つく。
きっと、この障気もそのうち消えてなくなっていくだろう。
俺は振り返りながら、そんなことを考えていた。
「ん~っ」
レミナが背伸びをする。
「よ~しっっ、これで私たちは英雄よ‼王国に帰ったら、顧問魔法師になって…みんなが私たちを
原初の魔法を使えるレミナ。しかし、魔法を利便のためだけに使い、科学によって汚れてしまった現代魔法が主流になった中で、レミナの一族の魔法は
街のはずれで貧しく暮らし、母も病気で亡くしていた。見方を歪め、原初の魔法を亜種の魔法使いと決めつけ、レミナのルビーのような紅色の綺麗な瞳を誰もまっすぐ見ようとしなかった。
「私も、私も・・・っ。大司祭になって孤児院をたくさん作る。そして、
本が大好きで、誰よりも神を理解していた
「あ~ぁ。でも、あんたが一番幸せよね。あんなきれいで、すべての国民に慈愛を降り注いでくださる姫様が待ってるんだから。王子になるなんて大出世じゃない」
頭の後ろで手を組んで、皮肉っぽくレミナが遠くを見ながら言う。
「あ~ぁ…」
寂しそうに、ため息に似たような声でレミナがまた呟く。
ルーンはルーンで、同じような気分なのだろうか。俯きながら想いにふけっている。
「王子なんて…柄じゃねぇけどな」
決められた予定が待っていると思うと
「なによ、悩んだ振りなんてして。柄にもない。ねー、ルーン」
「うん、これだから、レオルドは…」
わざとらしく、ルーンが笑顔でため息をつくと、レミナもニヤニヤ笑っている。
「姫様は…本当にすごい」
ルーンが呟くので、俺はルーンを見る。
「私の回復魔法もレオルドの魔防の首飾りも姫様の祈りで増強されている…姫様の愛を感じた。愛の深さは…う~ん、神様にも引けは取らないと思う」
「えっ、私だけ除け者にされてるぅ!?ルーンんんっ」
レミナがルーンにじゃれ合う。二人ともじゃれ合う元気があるなんてすごい。
出会った頃は、異端の魔女と
実際とは異なる二つ名とは言え、
「何、笑ってるの、レオルド。ドン引き」
「ほんとよ、私たちの可愛らしさにいやらしいこと考えてたんじゃないでしょうね」
二人してジト目で見られて困惑する。
「いや、二人と出会ったときのことを思い出してさ」
二人とも赤くなる。
「照れてんのか?」
「照れてないっ」
二人はツッコミを入れる。
「でも、だいぶ昔のことに感じるわね」
「うん、三年前に思えない」
「そうだよなぁ」
濃厚な三年だった。いや、一人旅も含めれば四年。
長い長い四年。この先これほど濃厚な日々は二度と来ないだろう。それにしても…。
「よく、俺たち生きてられたな」
「そうね」
「うん」
もし、もう一度、魔王が復活、あるいは同等以上の存在が現れた時に勝てるのかわからない。俺の体は
「子どもでも作るかな」
「なっ」
「ふぇっ」
レミナとルーンが変なことを出す。
「ん?なんか変なことを言ったか?」
俺の、俺たちのすべての力を使い切って魔王を倒した。なんなら、未来も代償にしてしまったかもしれない。それに数年後には衰え始めるだろう。ならば、次世代に託すというのに、どこがおかしいのだろうか。まだ、二人は戦う気満々なのか?
「すげぇな二人とも」
俺は二人の体を見る。戦いで汚れた俺とは違って、キレイな格好をしている。確かに、二人の魔法と祈りならもしかしたら、俺じゃなくても魔王に勝てるのかもしれない。
そんな風に二人を見ていると、二人は胸などを腕で覆う。
「はぁ、この変態は…っ」
「私たち、よく無事だった」
よくわからんが、二人が顔を真っ赤にしている。
「無事って、そりゃ、俺がそばにいれば当然だろ」
「だからよ!!」
俺が親指で自分を指しながら、ドヤ顔をすると、物凄い剣幕で怒られた。
「姫様の
ルーンがぼそっと言う。
「ていそう?よくわからんが、姫も二人もみんな俺が守ってやるよ。なんたって、俺は勇者で、魔王を今しがた倒した男だぜ?」
「いや、守っていいんだけど、夫になったら守るより、破らなきゃ…って‼私何言ってんだろう…」
両頬を抑えながら、顔を赤らめてレミナが恥ずかしがり、目を合わせてくれない。
「おい、話すときは目を見て話せって、口うるさく言ってたのは、レミナだろ。寂しいじゃねえか」
俺がレミナのあごに右手を添えて、顔を見つめると、完熟トマトよりも真っ赤になって頭から湯気がボンッと出て、レミナが固まった。
「レミナ…?」
「うっ、うっさい、馬鹿。乙女はいいのよ、乙女は‼」
あわあわしていたレミナだったが、スイッチが入ったように切れだして、思いっきりビンタされる。
意識が飛ぶ中、一つだけ思った。
レミナなら……
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