第35話 Herz und Mund und Tat und Leben
俺の地位は、非常に複雑だ。
元々は純日本人であったが。転生後、記憶転移による影響からアメリカ人ともなった。
その際、シャロンが色々な人脈を使った為に米国籍まで得る事が出来た。
その為、他の場合より、比較的、短時間で取れやすい。
双頭の鷲が描かれ、『United States of America』と書かれた旅券を掲げて、
「パパもアメリカ人~♡」
シャロンは、踊りに踊る。
相当、嬉しい様だ。
今まで日本国籍だけだった為、国籍上、俺達は遠かった。
然し何をしたのかは知らないが、米国籍を得た事で、俺達の意識は近くなった。
同胞として。
たかが国籍くらいで? と思う人も居るだろうが、やはり、祖国が同じになった事は、家族として嬉しいのだろう。
「パパ、はい、これ」
渡されたのは、『帰化証明書』。
「……帰化
新たにアメリカ市民となる移民は、帰化宣誓式(帰化宣誓宣誓式)と呼ばれる宣誓式に出席し、全ての移民はその場で「忠誠の誓い」と呼ばれる、アメリカに対して忠誠を誓う宣誓を行う。
忠誠の誓いには、下記の内容が含まれている(*1)。
・合衆国憲法への忠誠の誓い
・以前保持した全ての外国への忠誠の放棄の誓い
・国内外の敵から合衆国憲法を守る誓い
・法律が定めた場合、兵役に従事する約束
・国家の大事の際、法律が定めた市民としての義務を果たす約束
本来ならば、指定された建物内で行われるのだが。
当然、シャロン以外にアメリカ人は居ない。
「したい?」
「いや、遠慮するわ」
「そうだよね? パパは、アメリカ人だから」
「……そうだな」
日本国籍を放棄した訳ではないが、日本は22歳まで二重国籍が認められている国だ。
ハイチ、アメリカ、日本と多重国籍であったテニス選手も最終的には日本を選んでいる様に。
日本は、二重国籍を認めていない。
前世で多民族国家で育った俺としては違和感があったが、現世で日本人となって生活してみると、日本が二重国籍を認めないのは、分かる。
恐らく、外国人恐怖症が原因だろう。
鎖国を通して約200年、国を閉ざし、民族もほぼ単一。
事実上の公用語が日本語であり、島国。
外国人と接触する事が、歴史的、民族的、言語学的的、地理的に少なかったのだから、慣れないのだろう。
俺も米兵以外の外国人は、未だに緊張する時がある。
外国系日本人の芸人が「日本で育った為、外国人が怖い」とテレビで喋っていたのと同じ様な事だろう。
又、ハワイ王国が、外国人参政権を認めた為に侵略された悪例があるように、二重国籍を認めてしまうと、次が外国人参政権と、どんどん権利を要求されるかもしれない。
なので、そこは、毅然と遵守している、と思われる。
日本のその方針は、国家を守る為には、当然の事だ。
「でも、22歳でどっちかを放棄しないといけないがな」
「そうだね……パパは、どっち選ぶ?」
「……分かんないな」
シャロンが頑張ってくれた手前、祖国の地位を得た。
なので簡単には、捨てられない。
「パパは、司と一緒に居るんでしょ?」
「……ああ」
「なら、私も住むから」
「え?」
「子供の時、寂しい思いをしたから……良いよね?」
「……ああ」
弱い所を突かれ、俺は、変な汗を掻く。
「……パパが嫌なら別居するけど?」
「……嫌じゃないよ」
シャロンを抱き締める。
「あ……」
「出来る事なら一生、一緒に居て欲しい」
「パパ……♡」
前世で寂しい思いをさせてしまった分、現世は家族サービスに努めても罰は当たらないだろう。
シャロンの頭を撫でて、可愛がる。
外見上、年齢差がほぼ変わらない為、2人はお似合いのカップルに見えるだろう。
(……子供の幸せを願うのは親だが……俺もまだまだ子供だな)
子離れ出来ていない事に、俺は内心で自覚するのであった。
[参考文献・出典]
*1:ウィキペディア
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます