第6話
次の日の朝。昨晩は美桜が持ってきてくれたご飯を食べて、すぐに眠りについた。目は良かったものの、昨日の美桜のあの態度は一体なんだったんだ。いきなり昔みたいに名前で呼びだのなんて…不思議に思いながらも俺は学校の支度をして、一階に降りた。
階段を降りてリビングへと入ると、
「あっ」
「なにジロジロ見てるの?」
そこには制服の上にエプロンを着ている美桜が立っていた。昨日の態度がまるで嘘みたいにいつもと同じ感じの美桜であった。
「寝癖、直してくれば」
「え、あ、あぁ」
そう言われて俺は洗面台に行った。
鏡の前にいる自分のこめかみが跳ねている所を水で直して、歯を磨く。思いっきり美桜がうちに住んでいる事を忘れて、また変な反応をしてしまった。
そして再びリビングに戻ると、
「あら、祥太郎おはよう。朝ごはん食べるよ」
テーブルに母さんが腰をかけ、もう食べる準備に入っている。そして、その向かいに美桜もすでに座っている。そこまではなんの問題もないのだが…どうして美桜の隣に俺の皿がある?いや、言い直そう。なんで俺の指定席の隣に美桜が座っているのだ?
「え、えっと…」
「なに?食べないの?」
当たり前のように聞いてくる美桜に俺はかろうじて答えた。
「俺の椅子ってそこ?」
「な、なに?嫌なの?…」
「い、嫌ってわけじゃ、、」
「じゃ、良いじゃない」
別に嘘をついたつもりは無い。だが、俺はてっきり美桜が俺の隣になんて嫌かと思ったのだが、、
まぁ、それを口に出すことは無く、俺は美桜の隣の椅子に座った。少し椅子の端にだけど。
その後、しばらく沈黙が続く。とは言っても美桜が来る前も別にそんなに家族と喋っていたわけでも無い、けど美桜がいると何故か緊張してしまう。
「そういえば、あんた熱はもう大丈夫なの?」
そんな沈黙を破ったのは母さんだった。
「え、あ、うん。もう大丈夫」
「そう。あんたの部屋に行った後、美桜ちゃんが凄く心配してね。夜食を作ってあんたの部屋に行ったんだから、美桜ちゃんにはちゃんとお礼しなさいよ?」
「え?」
「っ!お、おばさん!それはー!」
美桜がいきなり椅子から立ち上がり、母さんに言葉を投げる。てか、美桜が俺の心配?
「あれって母さんが作ってくれたんじゃなかったの?」
「え?え、えっと、それは」
母さんは事態を把握出来ず、口を開こうとしない。チラッと俺の横で立っている美桜の方を見て、何か察したように俺の質問に答えた。
「あ、そ、そうそう。あれは私が作ったんだったわ!それで美桜ちゃんに運んでもらったんだったわ!」
さっきとは真逆の事は言う母さんになんか変だとは思ったが、
「そ、そうなんだ、、」
「ふぅ…」
俺がそう言うと美桜はどこかほっとしたように椅子に座り込む。
「さ、さぁあんたはもう学校行きなさい!美桜ちゃんは片付けがあるから先にあんた行っといて」
「う、うん」
何故か強引に学校に行かされた俺だった。
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