第5話
事故とは言え、幼馴染のパンツを見てしまった…小さい頃はよく一緒にお風呂とか入っていたが、それはもう幼稚園の時だ。今、美桜のパンツを見て理性を保てる訳がない。それに…美桜のパンツ……凄くエッチだったなぁ… いや、ダメだ。こんなだからあいつにも嫌われるんだ。
美桜と顔合わせるのは気まずいので、あの後、俺はずっと自分の部屋に閉じこもってラノベを読んでいた。だが、あんな事が起きた後だと、ラノベに集中出来るわけもない。つまり、俺は部屋でずっとぼー、としていたのだ。
「ただいま〜」
そんなこんなで母親が買い出しから帰ってきた。
「おかえりなさい、おばさん」
「あら、美桜ちゃん、祥太郎は?」
下の階から二人の声が微かに聞こえる。
「祥太郎なら、部屋に」
「なーに、まさか、あの子荷物の手伝いしなかったの?」
ちょっと待て。もし、俺が美桜のパンツ見たってお母さんに知られたらまずくね?お母さんは昔から美桜の事を自分の娘のように可愛がっていた。下手すれば、俺がこの家から追い出される。それだけどダメだ。ここには俺の大事なラノベたちがー
「いえ、ちゃんと手伝ってくれました」
「そう?なら、良かった」
あれ?言わなかったのか?でも、なんで?てっきり「あいつ、私のパンツを嗅ごうとしたんです」って無表情で言うのかと思ったのに…何がともあれ、とりあえずは助かった。後で美桜にちゃんと謝らないとなぁ、でも気まずいし…クソ、どうすればいいんだ。
「祥太郎、ご飯よ〜」
下から母親が夜飯のために呼んできた。行きたくない…美桜にどういう顔すればいいのか全く分からない。今までろくに女子と喋った事のない俺にそんなの分かる訳がない。ベットで横になりながらそんな事を考えていた。
コンコン、
「祥太郎?あんた、一体どうしたの?ご飯出来て、美桜ちゃんもお父さんも待ってるよ?」
心配して母親が部屋まで来てくれたようだ。
とりあえず、ここは、
「ご、ごめん、ちょっと熱っぽいから今日の夜飯はいいや」
嘘だ。思いっきり元気だ。ただ、美桜に会いたくないから、という理由で仮病を使う。
「大丈夫?薬かなんかいる?」
「だ、大丈夫。寝とけば治るから」
「そ、そう?分かった。なんかあったら呼んでね」
「うん」
そう言い、母親は下へ行ってしまった。これで一応、今日は美桜と顔を合わせずに済んだ…ってあれ?少し、瞼が重たくなってきた。ここ最近、夜遅くまでアニメを見ていたせいか?やばい…本当に眠たくなってきた…
………………
……………
…………
………
……
…
。
あ、あれ?なんか手に暖かい物が当たっているような…気が…する。とても安心する温もりだ。
「んっん」
俺は頑張って目を覚ます。微かに見えるのは、自分がまだベットに横になっている事。しかし、寝る前と違って、誰かが布団を被せてくれたみたいだ。お母さんかな?
そう考えながら、横を見ると、
「起きた?」
美桜?…美桜だ…………美桜!?そこには相変わらず無表情の美桜がいた。声もいつものように冷たい感じだが、少しばかり頬が赤い。
「ど、どうしてここ?」
「おばさんにご飯持っていって言われたから持ってきた、君が苦しそうに寝てたから」
「だ、だから手を繋いでくれてたの?」
「!?」
まるで今気づいたように、美桜は握っていた俺の右手を離した。
「ち、違う、、これは、」
違う方向を見て、チラッと俺の方を見て、また違う方を向く。
「こ、これはなんでもない」
「そ、そうか…」
これ以上聞いたら、本当に怒りそうだから止める。
「でも、ありがとうな」
「別にいいよ」
顔は見えないがきっと、今の美桜も少し頬が赤いに違いない。
「そ、それと、さっきは本当にごめん、春崎。わざとじゃないんだ」
良い機会だったので、先程のパンツ事件の事を謝る。
「べ、別に。そんなに怒ってないし…………祥太郎にだったら……」
「え、最後なんて言ったんだ、春崎?」
「な、何でもない!」
急に大声出す美桜に少しばかり驚いてしまった。
「そ、それより、」
「うん?どうした?」
何か言いたそうにモジモジする美桜。すると、少しだけ、こっちを見て、
「そ、その、苗字で呼ぶのやめて…昔みたいに『美桜』って名前で呼んで…」
あの美桜が予想もつかないような事を言ってきた。いつもは無表情でも可愛いが、今はもっともっと可愛い見えてしまう。いや、凄く可愛い。
「わ、分かったよ、み、美桜」
すると、美桜は目を大きくして、こっち見てくる。彼女は何故か嬉しいそうだ。どこかホッとしたかのような。
だが、すぐに顔逸らして、立ち上がった。
「うん。ありがとう。ご飯ちゃんと食べてね」
「お、おう」
美桜は部屋のドアを開け、背を向けたまま、
「もう、苗字で呼んじゃ嫌だよ?」
「え、今なんて言っー」
バタン。
よく聞こえなかったので聞き直そうとしたら、急にドアを閉めらてしまった。なんで、あんなにボソボソと喋るんだ?
でも、これでまた昔みたいに彼女の事をちゃんと名前で呼べるようになって嬉しかった。
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