第4話 強き敵との遭遇
「では、参りましょうか」
そういうと桐生の不意を狙ってグランベールは容赦無く距離を詰めてくる。
さっきまでは一切反応出来ず、思いっきり殴られた桐生だったが、今は全く早いとも思わない……むしろ遅いくらいだった。
再び同じ場所を狙っては来るが、悠々とそれを躱しお返しと言わんばかりに、グランベールの腹にアキトは拳をねじ込む。
「なっ!!」
数百メートル吹き飛ばそうと思い、おもっきり殴ったがグランベールは怯んで後ずさるだけだった。
「人間風情がこの私に……チッ!あの神族供か……」
殴っても怯んだだけであまり言動から効果があるような感じがしない……防御と反応速度は上がっても攻撃力は変わらない。
「ちぇやぁああああああああ!!!」
グランベールの背後から、御船はかかと落としをぶち込む。 船にとっては不意打ちのつもりだったが、グランベールは後ろを見向きもせずただただ御船の足を掴み、そのまま放り投げる。
「桐生!!やっぱダメだったぁああああ!!!」
御船は下手くそな受け身を取り、何とか堪える。
神天道の効果は桐生、御船それぞれ違い桐生は基本秘密基地から力を貰い自身の能力を上げる。
今は秘密基地自体がしょぼいがこのレベルが上がっていくと比例して能力が上がる幅も大きくなる。他にも細々としたものがあるが基本これがメインだ。
対して御船は、秘密基地の管理特化になっており、内部のことをより詳細に把握でき、秘密基地のアップグレード等の能力になっている。
なので桐生の攻撃が通らないのだから御船が通じる訳もないーー
「あなた方はどうやら’天道’をまだ使いこなせていないようですね……見せてあげますよ、完璧な力の使い方を!」
グランベールが強い口調で威嚇するように言い放つと、さっきよりもさらに高密度な真っ黒な塊が発生しグランベールの身体中に纏わりつき、体格が三メートルを超え、人の姿から翼の生えた真っ黒な人型の竜のような姿になる。
「「かっこいい……」」
フォルムはもう子供心をくすぐられようなかっこよさがあったのでつい二人からは本音が漏れてしまう。
「これが、私の力!邪道’黒龍煙’です」
グランベールの体からは真っ黒い排気ガスのようなものを常にあたりに漂わせている。
’邪道’という能力は二人にはよく分からなかったが、桐生は天道とほぼ同値と考え対処する判断にすぐ切り替える。
「この邪道も俺達が扱う天道の魔族バージョンと考えれば誤差は少ないはず」
桐生は小さく声を漏らす……
明らかに先ほどよりもグランベールの能力が跳ね上がり、今までのがお遊びということが素人目に良くわかるほど桁外れの強さになっていた。
「こりゃ、凄い……」
「当然!元々これだけの差があるのです」
たった一歩でグランベールは桐生との距離を全て埋める。
速度に反応は出来るが、恐らく一発でも貰ったらアウトだということを直感だけで判断し、桐生は避けることに徹する。
っ!!!ーー
爪が伸び禍々しい熱を持っているグランベールの単純な一撃を桐生は半歩下がり出来るだけ最小限の動きで躱す。
その爪の軌道上は蒸発したように真っ黒な煙が吹き出しており、かなりの熱を帯びていることが一目で分かる。
「しまったな、離れるべきだったか……」
「遅い!」
桐生が躱したと同時に、グランベールの尻尾は桐生の側面をとっており、思いっきり肩付近を強打され、さっきの御船のようにぶっ飛ばされる。
「ーーうぐぅ!!」
「大丈夫かよ!桐生……」
ちょうど、桐生が吹き飛ばされたのは御船の近くだったらしく心配そうな表情で近寄ってきてくれる。
「いってぇ……けど問題ない」
「ほらよ!捕まれ」
御船が差し出してくれる手を掴み、起き上がるーー
「ふふふ……つくづく運がいい方達ですね」
「ぐふっあ!!」
突然、御船が苦しそうに膝を落とし、口から真っ黒な血を吐き出す。
いつのまにか御船の体からグランベールと同じように真っ黒な煙が吹き出し始めていた。
「大丈夫か!御船!!」
「体が……うご……かねぇ……」
「あぁ……残念……残念だ」
グランベールは二人を悲しそうな目であざ笑うかのように観察する。
御船の体は痙攣しており上手く動かせていない。
「私のこの煙に触れたものは誰であろうと、体が痺れ始める、そして最後は心臓を痙攣させ死に至らしめる……」
「時間がねぇか……」
「そうですね、早く私をどうにかしないとあなたもいずれそうなりますよ?」
「一回死んで、この世界に連れてこられてこんな序盤もいいところで死ねるかよ」
桐生も、手をグーパーと開いたり閉じたりして痺れ具合を試して見たが、違和感があった。
こうやって注意して見ないと気づけないほど浸透の仕方が滑らかだ。
「すーーーーはーーーーー」
一回大きく深呼吸をして自分を落ち着かせる。
桐生は息を止めながら戦おうとも思ったが、そんなことをして勝てる相手ではないので一か八か思いっきり黒煙を吸い込む。
これは桐生にとっても賭けだったーー
「御船、まだ大丈夫そうか?」
「あ、ああ、やるなら早くしろよ……じゃないと死ぬ……」
「分かった」
『神天道’秘密基地’<係『体育』作成>』
これは、桐生の’神天道’の能力、作成によりノート内に書いてあった生物等に役割(係など)を与えることでこの世界に作成することが出来る力……
すると、さっきまで小屋だった木の建物が一気に大きくなり、巨大な木造のコテージに生まれ変わった。
「あれ?めっちゃ楽だぜ桐生!!」
さらに、桐生の力も先ほどよりもかなり大きく上昇し、横では御船がすっかり元どおりとなっていた……
「私の煙を一瞬で直すとは……面白い……」
グランベールは手元で真っ黒な直径十二センチメートル程の球体状の煙の塊を三つ作り、腕を軽くスナップし全て二人に放つ。
その塊はまるで、弾丸のような速度で二人に向かってきており、ほんの一瞬の出来事だったので反応出来ないのは確定した……
二人はダメージを覚悟し、体を強張らせ何とか最小限に抑えようとした瞬間ーー
どこからか放たれたであろう真っ白な氷の弾丸が三つの煙の塊を的確に全て貫き凍らせ、煙の塊は見当違いな方向へ跳んでいってしまった。
「っ!!」
グランベールも驚いてはいたが桐生達もその綺麗に射抜かれた煙の塊を見て、助かった嬉しさと、この技術の驚きなど様々な感情が入り混ざり、言葉が出せなかった……
「委員長……お怪我はありませんか?……」
そちらに気を取られると、二人の前に真っ白な少女が立っていた。
白いベレー帽に、白いマフラー、白いコートを着ており、可愛いと綺麗の境界線を辿っているような顔立ちで手には白銀のハンドガンを二丁携えている。
寒くもないのに吐いている息は白く、腰まである長い髪も白と白づくしの少女だ。少女と言っても身長は高く、百六十後半はあり、ぱっと見高校生以上に見える。
綺麗な青い瞳に白い眉にまつげ、全てを白に彩られた少女にジトっ……と見つめられ、少し経ってからようやく桐生は自分が話しかけられていることだと理解した。
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