第16話 捕
細い一本道をヤツが自転車でこちらに向かってくる。
ヤツは、帽子をかぶりマスクをして、壊れそうな自転車に崩れそうな息づかいで乗っている。
そして後ろからは走る松岡が見えた。
自転車は遅い。
ガタズンガタズンと音がしているところをみると、タイヤがパンクしているようだ。
そして明らかにヤツは弱って見える。
ヤツが兇器でも持っていない限り、素手で捕まえられそうだ。
俺は正面に向かって走り、驚く顔のヤツに向かって「止まれ!」と叫んだ。
ヤツは自転車から降りて横の畑に逃げ込もうとしたが、後ろから追ってきた松岡に取り押さえられた。
そして俺もヤツの手を掴んだ。
「小塚!!!!」
ヤツは目を見開き俺の目を見た。
「小塚、なぜ逃げる? お前は麻由美を殺したのか?」
「オレは…」「オレは…。 オレが…。そう。 オレが麻由美を死なせたんだ」ヤツは震える小さな声でつぶやいた。
想像してたより、ヤツはずいぶん小さな体をしていた。痩せたのだろう。
「小塚。 お前も死ぬつもりだったのか」
「はい。死ぬつもりでした。ずっと死ぬつもりで…」小塚の目からは涙は流れていなかった。…ヤツの目は枯れてしまった植物のように生命力を失っていた。
「わかっているとおもうが、我々は警察だ」
「はい」
「小塚。捕まえるぞ」
「はい」
その時、松岡が要請したパトカーが近づく音がした。
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