第14話 似
そのホシの写真を「岡田さんに似てませんか?」と見せられた時から
事件とはまた違う意味で俺はヤツが気になっていた。
捜索願いが出されてから4日後に、ヤツの妻である麻由美が川から水死体で上がったのだ。
事件と自殺の両面から捜査が行われ、結局、病気を苦にした自殺と決着がついた。
夫であるヤツも、もちろん取り調べを受け、当日のアリバイは「あの夜は食事から帰り、自宅で寝ていて、妻が居ないのに気づいて方々捜して回りましたが、見つけられませんでした」というもので、それを証明する人物はいないが、あちこちの防犯カメラにヤツの運転する車が映っていた事が決め手で、ヤツの言う、「捜し回っていた」が妥当だとなった。
ヤツは多額とはいえない、どちらかといえば葬式を出して墓を立てれば残り少ないほどの保険金を受け取った。
そして程なく妻を突然こんなかたちで失ったショックで長年勤めていた会社を辞めてしまい、いつの間にか姿を消した。
が、引っかかる事があった。
自殺にしては、、解剖の結果、、麻由美の胃には消化されないままの物やアルコールが残っていたのだ。
着ていた服もワンピースとジャケット。後に河原から発見されたバッグからは、化粧ポーチからハンカチから折りたたみ傘までが入っていて、何処かへ出掛けるための荷物に感じた。例えば、結婚記念日にわざわざ予約したレストランへ行くような。なのに、何故か、携帯電話と財布が入っていなかったのだ。
その後、別の事件の捜査で、川底から麻由美の携帯電話と財布が見つかったが、携帯電話は流されるうちにだいぶボロボロになっていた。革の財布は以外と原型をとどめていたが、小銭しか入っていなかったのである。
家に1度帰ってからの、、咄嗟の自殺?
本当に、自殺か?
おい、これは自殺で良いのか?
あれからもう2年が経つ。
自殺で片付いたはずの小さな疑問を何故俺が放って置けなかったのかというと、
それはやはりホシが俺に似ていたからだろうと思う。
そして、麻由美の妹から再捜査の訴えがあり。今に至る。
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