第10話 訛
薄く衣のついたミョウガの天ぷらにちょいと塩をつけていただく。
シャクっとした歯ざわりの後に、ふわっと青臭いミョウガの香りが立ってくる。
噛みしめる程に独特な苦味が舌に広がる。
後ろに添えてある青ジソもまた良い。
「ママ、日本酒もらえるかな」
「あい、ょっと。今、秋田の美味しいのがあるからそれでいい?」
「うん、お任せします」
「秋田って言えば、ぼーさん、少し訛があったよな」
「うん。なんていうか、、東北なのかなぁ」
「あの喋り方も、人柄が出ててさ」
「ほぅ。そのぼーさんって人は、なんだか皆さんに慕われていたようですね」
「そうだな。何があったという訳じゃ無いんだけど… あの人を嫌いな人なんていないんじゃないかな〜」
「な。なんでかな」
ぼーさんの話をするだけで場が和む。
「私も、お会いしてみたいですな」
ママさんがカウンターの向こうから俺の前になみなみと継がれたコップ酒をそっと着地させたと同時に、店の扉が賑やかに開いた。
若い二人連れの女性が「こんばんはー」と入って来て、やはり俺の後ろ姿に向かって「あら! ぼーさんっ、久しぶり!!」と声をかけてきた。
ママさんが空かさず、「はい、いらっしゃい。お疲れ様。 で、こちらはぼーさんではなく、やーさんよ」と紹介してくれた。
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