第9話 剃

「毎日、剃るんですか?」

「髭を剃るのと同じ感覚ですよ。たまには不精する事もありますけどね。まあ、毎日」

「…いいなぁ」

「ぇ? グッさんそっちですか?」

「うん。俺はこう見えても、金髪とか、スキンヘッドに憧れた事があるんだ」

「へー。なんか音楽とかやってたんですか?」

「そ。若い頃はミュージシャン目指してた」

「マジで?? 知らなかった」

「で、やーさんはなぜスキンヘッドに?」

「…。」

「いや、いいッス。無かった事に」

「ワハハ。カッコイイと思ってやってます」

「ふあっハイ! ですよね、ですよね」

一気に喉が乾いたのか二人は生ビールを飲み干し、4杯目のおかわりをしていた。

こんもりと泡の乗ったグラスを二人の前に置くと、ママさんが「やーさん、ミョウガは食べられる?」と聞いてきて「好きですよ」と言うと「良かった。今、天ぷらを揚げるから。 グッさんとヤマちゃんも食べられる?」と聞いて奥のコンロの方へ下がって行った。

「ミョウガって言えば、ぼーさんがいっぱい持って来たことがあっただろ」「うん、あん時からだもん。オレ、ミョウガ食べられるようになったの」

「ぼーさん、最近来ねぇな」

「どうしたんだろうな」

「その、ぼーさんは、この辺の人なんですか?」

「ん〜、違うと思う。1年前ぐらいから…確か見かけるようになって」

「仕事は何をしてる人?」

「わからない。聞いた事なかったな」

「でも、時々、山菜とかミョウガとか青じそとか花とかママに持って来てたから、庭師とかじゃね?」

「あ、それいいな。合ってる、似合ってる」


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