第7話 火

翌週の火曜日。

俺はまたあの店にいた。

夕方の早い時間に一番に席に座り、まだ支度中のママさんに時々気を使ってもらいながら、とりあえずつまんでてという小鉢を並べてもらって瓶ビールを手酌で飲みながら時間をつぶした。

次に扉を開けて入って来たのはサラリー

マン風の二人組だった。

二人組の片方が「あれ、ぼーさん、久しぶり」と俺の顔を覗き込んで「ぁ、あれ?」と瞬きをした。

カラカラと扉を閉めて後に続いたもうひとりの彼も「あれ?」と立ち止まる。

ママさんが「いらっしゃい。 こちらさんは

ぼーさんじゃないのよ」と言ってフフフと笑った。

俺は斜めにそちらに向きを変えて「どうも」と一応挨拶をした。

何故だか一瞬二人組の顔に緊張が走る。


二人組は一番奥の席に静かに座った。

ママさんからおしぼりを受け取ると、こちらには視線を向けずにママさんの方に「あの、、いつもあの席に座ってたから、、間違えちゃった…」と人違いを詫びたいのか、その理由を言葉にしていた。

俺の反応が気になるだろうが、こちらを見ない。

その空気を察したママさんが「ああ、なんとなく似ていらっしゃるのよね。この間初めていらっしゃった時もね」とこちらに微笑みを向けてから「タクちゃんに、間違われて」と彼らの心を軽くした。


「どうも。何だか、常連さんに良く似ているそうで。お気になさらずに」と俺が声をかけると、「はあ、すみません…」と、二人組はやっとこちらを向き俺に謝る事ができた。




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