第2話 禿

「いやね、本当に似ているんですよ」

「そうですか」

「あ、昨日、もしかして美眺橋にいました?」

「美眺橋?」

「ほら、郵便局の手前の、川の」

「ああ、郵便局のところの橋ですか」

「そうそう、夜中、1時半過ぎに」

「寝てました」

「そっか〜、、 じゃあやっぱり、あれはぼーさんじゃないかな〜」

「ぼーさん?」

「うん。ここの常連さんでね。最近来なくなっちゃったんだけど。オレ、昨日見かけたのよ、タクシーの中から。」

「お坊さんなんですか?」

「ちがうちがう」

「あ、俺みたいに、この頭なんですか?」

「…、まあ。そういうこと」

「なるほど」

「ぁ、気を悪く」

「大丈夫です。アハハ。慣れてますから」

「でもあなたは、なんて言うか、、ぼーさんというよりは やーさん て感じだね」

「ちょっと、タクちゃん、失礼よ」

ママさんが二人の会話に割って入った。


「アハハ、ママさん。大丈夫ですよ。慣れてますから」


「ハゲってだけで、ぼーさんだのやーさんだの。失礼ですよねー」

「これ! タクちゃん!!」

「ごめんなさいね。タクちゃん、酔っ払って…、悪気はないのよ。許してあげてね」

「そういうオレだってね、「昔、卓球やってました」って言っただけで、タクちゃんって呼ばれてるんですよ。変な店でしょ。他に肝臓が悪いのに飲みに来るカンちゃんって人や、保育園の先生なんだけどケバいっていうんでオミズって呼ばれてる女の子もいるよな」

「写真屋の荒井さんがね、、あ、もう去年死んじゃったんだけど、あだ名つけるの好きでね…、うちのお客さんは皆、あだ名なのよ」

「名前で呼ばれてるの近藤先生だけだよな」

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