第24話「この恋の最終便は、22:30」 第2章「距離で見失いそうな、篤の恋」

篤①「電線・つなぐ」

女の機嫌は、細部に出る。

PC画面に映った雪乃は、切れた電線みたいに耳を引っ張っている。

耳のダイヤのピアスは雪乃の欲しがった去年の誕プレ。


女の機嫌の取り方なんて、セックスとプレゼント以外に思いつかない。

そして遠距離は、男から身体の解決法を奪っていく。

いったい。

どうすりゃいい?



篤②「悪口・つなぐ」

こっちが必死に会話をつないでいるのに、雪は返事もしない。

職場でアホ後輩の尻ぬぐい。家に帰ればカノジョのご機嫌取り。

せめて酒くらい飲ませろよ。


そう思ったら雪の唇がとがった。

「飲んで悪口? 篤らしくない」


くそ。

こっちはその口に食らいついて、舌で犯したいってのに。

ああ、雪を。

抱きてえ。



篤③「記憶・つなぐ」

雪の肌の味が思い出せない。

雪の熱さを思い出せない。

最後に、思うぞんぶん雪を抱いたのは、いつだった?


身体は覚えているのに、頭では忘れた。記憶の中の雪は、他の男のものみたいだ。

他の男のもの? 雪が?


寒気が走る。

距離さえなければ今すぐつながって、安心できるのに。

雪はひとり、大阪にいる。



篤④「ビル・つなぐ」

「このビル、建て替えなんだ。2LDKに引越そうか」


そう言っても、雪は目線を落として黙っていた。ちらりと雪の手元が映る。

スマホ? おれと話しているのに?

相手は誰だ。

雪の右手は、どの男とつながっている?


おれの目がPCに貼ってあるメモを読む。

名古屋発、新大阪行き。

最終便は22時58分だ。


(第3章 「この恋が、つながりますように」へ続きます)




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