チキンカツ定食

いつもの昼飯は、働いている旅館の食堂で、朝の残り物の白飯と味噌汁。

でも、たまにはお金を払って外で食べたいときがある。


今日は久しぶりに、京大前の学生相手の食堂へ行く。

安さと分量が魅力のお店。

チキンカツ定食を頼むと、おばさんは先にご飯だけを持って来た。

「作ってるさかい、おかずはちょっとまってや」


アツアツのご飯はどんぶりにたっぷり大盛。

てんこ盛りになった広い表面積から勢いよく、もくもくと湯気を出している。


ごく。


しかし。


いつまで経ってもやって来ないチキンカツ。

ただただ、なすすべもなく放散されていく熱を見つめるばかりの俺。


すっかり湯気も出なくなったころ、チキンカツの皿が運ばれて来た。


なんだか、俺の青春みたいだな、と思った。

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