第16話 待ち伏せ



 命からがら逃げ延びた先では、ラナンナが待ち伏せていた。


 他の者達は見逃しても、私達だけは見逃せないといった様子で。


 執念の強さを感じた。


 彼女の力は、私やミクリと同等に迫るほど強い。


 その思いの強さを、どうして自分の研鑽につぎ込めなかったのか。


「ここでおしまいにしてやるわ!」


 彼女はどうやって運び込んだのか分からない、魔物の檻の扉をあけた。


 近くにいる彼女もただではすまないというのに。


 自分もろとも、自分が死んでも、復讐を完遂する。


 魔物にかみ砕かれながら、ふみくだかれながら、笑い声をあげるラナンナ。


 彼女から感じた狂気で、腰が引けてしまう。


「いずれ人類の希望をになる聖女様を、ここで失うわけにはいきません。カチュアさん、ここは逃げてください」


 ミクリ言われて、また私は逃がされた。


 私はこんな時でも、何もできない。


 力が強くても、同僚を大切な人を助けられられなければ、何の意味もないというのに、


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