第19話 旅
「おじいちゃん、おはよう。今日は○○キャンプ場まで走る予定だよ。行ってきます。」
「おう、気を付けてな。」
「
和之は貴生の返事を待たず、電話を切った。
「ご苦労なことね。」
「しょうがないだろ。GPSを付けられなかったんだから。」
和之は貴生の性格の良さは認めているが、能力についてはあまり信用していない。絶対に何度かは
「そんなに心配なら、まだ高校生なんだからそもそもバイクの免許を取らせなければ良かったのよ。」
一美にばっさり切り捨てられて肩を落とした和之を見て、一美は慌てて付け加えた。
「美生は美生なりに色々考えているし、
さて、その頃。
美生たちの後を付いて行った貴生は悪戦苦闘していた。美生たちは苫小牧のホテルで一泊したので、フェリーのタイムラグは問題にならなかった。これは、もちろん和之が何だかんだ理屈を付けて、美生と佳が苫小牧で一泊するよう仕向けたからである。
「フェリーが苫小牧に着くのは午後2時だから食材を仕入れてキャンプ場で飯を作ったりすることを考えると全然走れないぞ。それに朝に出発した方がな、何かこうツーリングが始まるって感じがして気分が盛り上がるぞ。」
祖父の和之にそう言われて、美生は分かったような分からないような気分になったが、あまりに和之がしつこく勧めるのでそうすることにしたのだった。
朝、美生たちが出発するのを物陰で見届けてから貴生も出発したが、美生たちが見える位置にいると気付かれる可能性が高い。何より二人とも初心者なので走るのが遅く、後続の車は美生たちのオートバイは充分距離を取って追い越してくれるが、貴生の軽トラックはそうは行かないのでクラクションの嵐だった。
それで、美生たちのすぐ後ろを走るのは諦めて、時間を調整しながら30分位遅れて走るようにした。それでも美生たちが休憩したり昼食を食べているのに気付かず、追い抜いてしまったり見失ってしまったりで苦労している。
キャンプ場も同じキャンプ場だと、鉢合わせてしまう可能性が高い。近くに別のキャンプ場があれば良いが、そう都合の良いことは滅多にないので、近くの空き地で野宿することがほとんどだった。
バーナーで沸かしたお湯でコーヒーを飲みながら夜空の星を眺めて、貴生は呟いた。
「やっぱり北海道はいいよな。」
それでも貴生は久しぶりの北海道を楽しんでいたのであった。
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