第2話 こたつ内少女
佳は毎年の夏休みは海外に短期留学しているのだが、向こうでは大変もてるらしい。まだ佳が黒縁眼鏡をかける前のことであるが以前、美生がそれをからかうと
「好きでもない男にしつこく付きまとわれる身にもなってくれよ。私を好きだと言ってくる男は、ニホンのアニメとマンガ、ダイスキデースとか言う奴ばかりだぞ。」
佳は溜め息をつくのであった。
そんな彼女も清空女学院に入学したのだが、急に父の海外赴任が決まってしまい、佳は同行を拒否したため半ばペナルティ的にこんなオンボロな寮に放り込まれたのであった。
最も、佳はマイこたつでどてらを着て、みかんを食べるのが夢だった等と言って、この寮生活を楽しんでいるらしい。美生は毎日放課後、この寮に来て佳と話をして帰るのが習慣となっている。
さて、話は戻るが
「バイクの免許は保護者の了解があれば別に良いって。ただバイク通学は許可制でよほどの理由がないと難しいと言われた。」
「ふーん、物分かりがいいね。」
清空女学院は名門ではあるが、いわゆるお嬢様学校ではない。前身は看護師を養成する看護学校だった清空女学院は、自立した女性を育成する自由闊達をモットーにした校風である。
校則らしいものはなく、『一人の人間として公序良俗を守るべし』という校是があるのみである。過去にあった前例については、清空女学院の生徒専用のサイトで検索できるようになっている。
入学前はバイクの免許を取るのは校則違反と思い込んでいて、確認もしていなかったが、バイクに関する前例を見たら左足が不自由な生徒がAT免許を取得してスクーターで通学していたという前例があって、それでバイクの免許を取るのは学校で禁止していないのか? 美生は担任の教師に相談に行ったのであった。
「で、どうするんだい?」
「免許を取って、夏休みにオートバイで北海道にキャンプツーリングに行く。」
美生は言い切った。
「やっぱりね。でも今時うら若き乙女がバイクに乗ってキャンプをしなくてもいいんじゃない?」
「免許を取るのにお金はかかるけど、オートバイもキャンプ道具も家にあるからタダで遊べる。使わないのはもったいない。何より北海道に行きたい、自分でオートバイを走らせたい。」
「美生って妙なところケチだよね。まあいいさ、私も付き合うよ。今年の夏休みは二人で北海道に行こう。」
佳は苦笑した。だが今、佳に教習所の費用やバイクの購入費用が捻出できるのか? そもそも今あまり両親とうまくいっていない佳にバイクの免許を取ることの許可がもらえるのか? 美生は尋ねた。
「バイクの免許は何とかするが、バイクを買うのは難しいかもな。美生、おじいさんに1台貸してもらえるように頼んでくれないか?」
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