クッチョロ!! ハイスクール編
沙魚人
第1章 美生と佳
第1話 赤毛の少女
東京の郊外に、『清空女学院付属高等学校』という女子校がある。歴史のある女子大の付属高校だ。
その校門を一人の少女が通ろうとしていた。この4月に入学したばかりのほやほやの一年生である。その少女、
美生は人目を引く少女である。これと言って特徴のない顔つきは、10人いれば3人位は可愛いと言ってくれる程度で、体型も中肉中背で取り立てて言及するところはないが、若さと健康を感じさせる。
それなら何故、美生は人目を引くのだろうか。美生の髪は一般的な日本人にしては、赤毛、つまりかなり明るい茶色でしかもその髪が上下左右にうねっている癖毛だったのである。
美生に会った人は皆、美生の髪に気を取られてしまい、顔などは印象に残らない。そんな髪の毛で個性を使い果たしてしまった感のある少女、それが美生だった。
もっとも目立つのが嫌いな美生は、この髪に少々コンプレックスを持っている。校門から出るとカバンから地味な色のニット帽を出して、髪を隠すようにすっぽりと被った。その後ろ姿は、大きな
美生は校門前のバス停を通り過ぎて、学校のコンクリートの塀に沿っててくてくと歩いた。何しろ敷地が広いので、15分程歩いてようやく校門のほぼ裏側にたどり着いて美生は立ち止まる。一見分かりづらいがそこは塀と同じ色に塗られた鉄の扉があった。美生は扉の脇のインターホンの3桁の数字を押した。
「
「今、開ける。」
かちゃんと電子錠が開く音がして、美生は扉を押して中に入った。10メートル程先に木立に囲まれた古い民家が建っている。瓦屋根で色褪せた板壁の民家であった。玄関の脇には、『清空寮』と墨で書かれた木の看板が下がっている。昭和なガラスが嵌まった木の引き戸をがらがらと開けると玄関の脇の受付の窓から、管理人がひょこっと顔を出した。色白で丸顔の愛嬌のある女性である。彼女は美生を見ると、えくぼのある笑みを浮かべた。
「
「お邪魔します、
美生は靴を脱ぐと反対向きに揃えて、すぐ脇にある階段を上がった。築50年を軽く超える建物の階段はぎしぎしと音を立てるが、合板ではない無垢の一枚板の床も壁も磨き立てられ黒光りしている。2階に上がると廊下を挟んで左右に引き戸が8つ並んでいた。美生は一番手前の右の引き戸をノックした。
「どうぞ。」
美生はドアを開けた。半間の押し入れがついた畳敷きの四畳半の部屋にベッドと机があり、残りのスペースに炬燵が置かれて畳は全く見えない。その炬燵に赤いどてらを羽織った少女が入っていた。青みがかった黒髪を肩まで垂らし、一世を風靡したアニメの主人公ア○レちゃんみたいな黒縁の眼鏡をかけている。
「やあ、美生。まあ座って。」
佳と呼ばれた少女は、マグカップにティーバッグを放り込むと電気ポットからお湯を注いで美生の前に置いた。
「で、先生はバイクの免許を取るのは何だって?」
佳はぶっきらぼうに尋ねた。
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